4.グランバニア

 

 洞窟から出るとすぐに、整備された道に出る。そこを通って暫く進むとラインハットやテルパドール以上の大きさの城が目の前に現れる。馬車を城から 少し離れた場所に止めて、仲間たちには野営をお願いして、リュカとビアンカはグランバニアに向かう。
 二人が中に入ってみると、そこは街が丸ごと城の中に入っていた。

「この城だけで街一つ分・・・?」

 下山の道すがら、時々城の影を見てはいたがここまでの規模とはリュカもビアンカも想像していなかった。中心に噴水のある大通りが整備され、必要な 店が両脇に軒を連ねている。
 歩きながら街の人々にサンチョのことを尋ねてみるが、名は知られていて前王の従者であったことを知られて居るものの今グランバニアに居るかどうかを 知るものはいなかった。そのまま突き当たりの教会に来る。何人か教会で祈りを捧げている人が居るが、そこにサンチョらしい姿は無い。教会の神父に話を 聞くと毎日祈りに来ているが今日はまだ姿を見せていないと言うことだった。

「サンチョ殿ならば、城と外壁の間をぐるっと回って、裏庭の方に住んでおられるよ」

 丁寧に神父はサンチョの居場所を教えてくれた。早速リュカとビアンカはそのサンチョが住む家に向かう。
 裏庭には確かに一軒家があったが、使用人や階級の低い侍女などが住むようなみすぼらしい家でしかなかった。

「こんなところにサンチョさんが?」

 まだ少し顔色のさえないビアンカがリュカに聞く。リュカもサンチョの本当の姿を知っているわけではなかったが街の人々話からすると、余りに格差の ある家だった。入るのを躊躇していると、中からシスターが姿を現す。

「あの・・・こちらにサンチョと言う人がお住まいだと聞いたんですけど」

 リュカがシスターを止めて訊ねる。シスターはやはり丁寧に返事をしてそこがサンチョの家で今は中に居ることまで教えてくれた。
 ドアを開けたまま待ってくれたシスターに会釈をして礼を言い、中に入る。こざっぱりした家の中はサンタローズの家をなんとなく思い起こさせた。

「シスター、忘れ物ですか?」

 人の気配に気付いたのか、聞き覚えのある声が聞こえた。姿を現すまでリュカとビアンカはその場で待った。
 姿を現したサンチョは少し痩せていて、かつての恰幅のよさはなりを潜めていた。

「どなたですかな?」

 その男性から発せられる声だけはサンチョのそれだったが、でも痩せているからかよくよく間近で聞くと声も違うようにも聞こえてしまった。

「あの、サンチョさんですよね?」

 リュカが緊張気味で訊ねると目の前の男性は不思議そうに首を傾げて返事をした。

「ええ、私がサンチョですが…あなた方は?私にはあなた方のような綺麗なお嬢さんに知り合いは居ないはずですが・・・」

 そう言うと男性は暗い表情を浮かべて溜息をついた。

「サンチョさん、わたし…パパスの娘のリュカです、覚えていませんか?」

 サンチョが目の前に居ると言うだけで涙でいっぱいになったリュカ。それを見てサンチョは少し慌てたが、リュカから告白されるとその焦りは驚きにな る。

「ええっ!?お嬢様・・・?リュカお嬢様ですか!?」

 酷く驚いた様子を見せて少し痩せたサンチョがリュカの肩を持って、じっと見つめてくる。

「おお、このマーサ様に良く似た瞳、そしてだんな様と同じ黒髪・・・まさしくリュカお嬢様!!」

「サンチョさん、心配かけました。無事に戻ってきました」

 サンチョはリュカを見て涙を滝のように流しながら頷いていた。リュカも涙でいっぱいの瞳でサンチョを見つめながらやはり同じように頷いた。

「なにを仰います。私のほうこそすみません。大事に駆けつけられなくて・・・」

 サンチョはそこまで言うと、何かを思い出したように顔を上げ、力なく首を振ってため息をつく。

「・・・サンタローズのことですね?今は生まれ変わったラインハットが入って村の再興中です」

 サンチョの様子を見てリュカが呟く。サンタローズの名を聞き慌てて振り返り見つめたリュカからは信じられない言葉を聞けた。泣いていたサンチョは 更に泣き出してしまう。

「なんと、サンタローズの再興まで・・・!」

 ここまで聞いては抱きつかずには居られず、サンチョはリュカに抱きついて暫くうれし涙を流していた。
 ハッと我に返ってリュカから離れたサンチョの目に、リュカの隣に立つ綺麗な金髪の娘が入ってくる。

「えぇと・・・?」

「私は覚えていますか?アルカパのビアンカです」

 気付いてもらえたのを確認して、ビアンカがそう告白する。

「び、ビアンカちゃん!?しばらく見ないうちに大きくなられて・・・」

 サンチョはビアンカの手を持って上下に降りながら再会の喜びを表現していた。

「しかし、ビアンカちゃんがまた何故・・・?」

「それは・・・・・・」

 サンチョが不思議そうに、さも当然に並んでいる二人を見て訊ねる。ビアンカはその答えについて少し言い淀んでいたが、それをリュカが止める。

「ちょっと待ってください。…サンチョさんに聞いておきたいことが沢山あるんです」

 リュカがそう言うと、サンチョは目を伏せて頷いた。そして二人に座るように勧めた。リュカとビアンカはサンチョと向かい合う形でテーブルに着い た。

「まずは…父様がグランバニアの王様だと言う話を聞きました。それは本当なのですか?」

 あれもこれも聞きたいことは山積していたが、いざとなるとそれらの質問はまとまってなくなってしまう。リュカは中でも一番肝心なこと二点を確認す るつもりで慎重に言葉を発する。
 一つ目の質問にサンチョが答える。

「はい、そうです。だんな様はグランバニア国の王、パプスエリケア・ドラグレイエム・グランバニア陛下です。そしてお嬢様はこの国の姫様、リュクナ デュエル・ドラグレイエム・グランバニア殿下です」

 静かに言うサンチョの言葉を聞き、納得するようにリュカは頷いた。だが、その目はサンチョを見つめて全てを納得していると言うわけではなかった。

「…この国の姫、と言うのは嘘ですね」

 まっすぐにサンチョを見つめてリュカは呟く。その声を聞いてサンチョはハッとした表情になったが、少しがっかりした様子を見せて頷いた。

「そこまでご存知でしたか。……はい、パパス王の娘ではなく、リュカ様は息子、グランバニアの第一王子になります」

 隠しても仕方が無い、そういった感じでサンチョは静かに真実を語る。サンチョも知りえたこの秘密を改めてリュカは知る。

「でも、何故それを・・・?」

「一つは、ラーの鏡と言う真実を映し出す鏡によって自分の姿を見たときに男である自分を知りました。そしてもう一つはティラルと言う人 物・・・・・・」

 隠していたはずのことをリュカが知っている。どこで知ったのかサンチョは気になった。それをリュカは少しだけ怒りとも取れないような苛立ちを含め て告げた。

「ティラル様がお嬢様の元にも現れたのですか・・・」

「封霊紋と黒霊石。このバロッキーの話も聞かせてもらいました。ティラルと言う人は何者なんですか?」

 サンチョはティラルのたくらみが読みとおせずに少しもどかしい気持ちを持っていた。それはリュカも一緒のようで、ティラルの駒のように動くように なってしまっている自分に少しだけもどかしさを持っていた。

「私もティラル様のことは詳しくは知らないのです。だんな様はお嬢様が生まれた直後に会っているとは言っていたのですが・・・」

 歯切れのわるい答えをサンチョがする。素直に全てが明らかになるとは思っていなかったが、それでも自分が知っている範囲内のことくらいしか明らか にならないのはリュカにとっては少しもどかしかった。

「昔、サンタローズでティラルさんはわたしの守護神だと父様が言ってられましたけど・・・」

「ティラル様はグランバニアの創生の時に、お嬢様のご先祖様と共にグランバニアを作り上げた方と同一人物だと自分で言っておられましたが…どこまで 本当のことなのかは確かめようがありません」

 リュカもサンチョも中途半端な話しか知らされてなく、ティラルに関しては謎ばかりが生まれる一方だった。
 三人は暫く沈黙した時間を過ごす。そして、リュカが口を開く。

「…ビアンカ姉さまにはわたしの知る全てを話しました。その上で、姉さまとは結婚しました」

 静かに、だが喜ばしいこと故に明るさを取り戻してリュカはサンチョに、ビアンカが同行している理由を告げた。それを聞いて、ビアンカが居たことを 知ったときよりも驚いてサンチョはしばし言葉を失った。

「結婚ですか。それはめでたいことですが…いったい今まで何があったのです?ラインハットにだんな様と二人行き、その直後に行方不明。そのあとはラ インハットがサンタローズを滅ぼしに来て・・・お聞かせいただけますか、お嬢様」

 それが聞けないことには納得できないと言った表情でサンチョはリュカに迫った。リュカのほうもそれは承知の上だったようで、頷いてことの詳細を話 し始めた。

 

「そうでしたか・・・・・・お嬢様も苦労なされていたんですね。私はサンタローズ襲撃から暫くは警戒を買って出ましたが、暫くしてサンタローズをあ とに、グランバニアに戻りました。現王に詳細を報告してからはここで活力も無く過ごしていたのです。お嬢様と比べて何もしていない私など…なんと恥ず かしいことか」

 リュカの告白に涙しながら全てを聞き、その間の自分と重ね合わせたのか、サンチョは自嘲的なことを言って、今度は悔し涙を流した。

「でも、サンチョさんには今までしてきたことが最上だったと思います。だから余り自分を責めないでくださいね」

 歯をかみ締めているサンチョを見て、リュカが呟いた。小さく礼を言いながらサンチョは涙を拭っていた。

「……父様が旅に出ていたのでは、王様は誰が?」

「現王はだんな様…パパス様の弟君のオジロン様−オジリニアス様が王位についておられます」

 ふとしたリュカの質問にサンチョが丁寧に答える。

「オジロン様にもお嬢様がお戻りになられたことをご報告しなければなりませんな」

 リュカに答えた言葉に続けてサンチョはふむと一人考え込みながら呟いた。それを聞いたリュカはまた聞きたいことが生まれてきた。

「サンチョさん。わたしが男である事実はどのあたりの人まで知っているのですか?」

「王家の方々は皆ご存知です。あとは私や身の回りの世話をする侍女程度、王室に近い大臣などで、グランバニアの関係者の多くはお嬢様はあくまで姫君 であると思っておられます」

 少し落ち着いたのか、サンチョは今までの声で話し始める。自分のことを知っているのがあまり大きい範囲ではなく、リュカは少しだけ安心した。

「…オジロン王にお会いになったほうがよろしいでしょう、少し準備いたします、お嬢様とビアンカさんは少しおまちください」

 席を立ったサンチョはリュカとビアンカにそう告げると、奥のベッドなどがある部屋に入って行った。

「…隠されていたことを怒っているの?」

 声の変化に気付いたのか、ビアンカはリュカにそう訊ねる。

「……よく、わかんないんです。けど…意外と多くの人はわたしの本当の姿を知っているのかと思うと…でもやはり複雑です」

 まだ自分の思いなどがまとまらないのか、リュカは渋い顔をして唸りながらビアンカに伝えた。そうしているうちに、サンチョが戻ってくる。その姿は 礼服を纏っていて、単なる旅の従者には見えない、きちっと着固めた青年と呼ぶに相応しい格好だった。

「私だけでも正装は必要ですからね。お嬢様のことは初めは姫君としてお話します。おそらくオジロン様は人払いをしてお嬢様と話をすることでしょう。 そのときは王子として接しても構わないと思います」

 そう言って短剣を腰に差して改めて姿を見せる。まだ少し残る恰幅のよさが相まって随分と強敵そうにサンチョは見えた。そのサンチョに連れられて、 城の中に再び入っていく。
 三階の謁見の間の前は扉が閉められていて、衛兵が固めていた。正装のサンチョをみて少し驚いた様子を見せた衛兵は、すぐには中に入れようとはしな かった。

「オジロン様に緊急の報告あり、通されたし」

 手短にサンチョは衛兵に用件を伝える。だが、後ろにつくリュカとビアンカが気になるのか、衛兵は少し通行許可を出すのに躊躇していた。

「この方たちは私の知り合いです、オジロン様にお目通しいただくのもこの方たちです」

 サンチョが怪訝そうな衛兵に説明して、ようやく謁見の間の扉を開いてもらう。
 中は広い間があり、その中央に玉座がある。その玉座にはリュカと同じ黒髪の、サンチョとパパスの間くらいの年齢の男性が座っていた。

「サンチョか、どうした?」

 謁見に来たのはサンチョのほうで、挨拶などもすぐにするべきだったのだろうが、オジロンは親しみたっぷりにサンチョに声をかけた。サンチョは改め て片膝をついて優雅に礼をする。

「陛下、本日もご機嫌麗しゅうございます。実は火急の用件がありこうして参りました。先王陛下、パパス様関係のことでございます」

 サンチョは改まって丁寧に言葉を出す。その様子に少し窮屈そうな仕草をしながら話題の中身を聞きたがるオジロンだった。が、サンチョの口からパパ スの名が出るとオジロンも表情が一変する。

「なに、兄上のことだと・・・!?」

「はい。先王陛下のお子様であり行方不明であられたリュクナデュエル王女殿下がお帰りになられたのです」

 サンチョの言葉にオジロンは目を見開き驚いた。サンチョの後ろに居る二人のうちのどちらかが本人、リュクナデュエルと言うことまで分かると、玉座 を立ち上がる。

「まことに…リュクナデュエルか・・・?」

 オジロンが近づくとサンチョは立ち上がり、リュカの方に促す。

「おお・・・その美しい黒髪は義姉マーサのもの、なにより濃い黒髪はパパスのものにも良く似ておる。そして優しそうなその瞳はマーサに瓜二つ。凛々 しさはパパスを生き移したようだ」

 オジロンはリュカの手を取ってそう呟く。リュカは少しばかり息苦しさを感じながら頭を下げる。

「お待ちくだされ。何の証拠も無く王女殿下であると信じなさるのはどうかと」

 対面をそう言って邪魔するものが居た。玉座の横に並んでいた宰相が声を上げる。

「無礼でありましょう、閣下」

 サンチョがその言葉に少しばかりの怒りを見せて、反論する。

「いや、もしリュクナデュエルであれば、左手に紋章が刻まれておるはず。済まぬが見せてはくれぬか?」

 その紋章がどういったもの、目的で刻まれているのか、グランバニアで知るものはいなかった。だが、逆にそういった紋章を持つものも居ないため、個 人の特定にはもってこいのものだった。
 リュカはオジロンに言われると、左腕を覆っている手甲のようなバロッキーを外す。誰もがそれを綺麗だとは言わなかったが、オジロン自らが証拠だと言 うものはその左腕から甲にかけて刻まれていた。

「確かに、赤子の頃にあった紋章だ。よく戻ったな、リュクナデュエル」

 リュカは挨拶らしい挨拶もしないでオジロンに抱きしめられる。暫くの抱擁が続き、離れたところでようやくリュカが言葉を発する。

「わたしのことはリュカとお呼びください、叔父上。ただいま戻りました」

 片膝をついたりでは無かったが、丁寧な言葉を使ってリュカはオジロンに挨拶する。

「今日の皇務はこれまでにする。関係者以外は謁見の間を出よ、リュクナデュエルと話をする」

 サンチョが想像したようにオジロンは人払いをして、最低限の関係者だけが残る。その中にはいまだ納得できないと言ったような宰相の姿もあった。

「リュカよ、良く戻った。…呪いはまだ解けぬか」

「はい、叔父上。だけど、少しずつその呪いのことも分かり始めています」

 人が居なくなり、リュカの真実を知るものだけになったのを確認したオジロンは改めてリュカの手を取ってねぎらいの言葉を掛けた。そして、真実のこ とも口にする。

「これまでどうしていたのだ、兄上と共に行方不明になったと言うのはサンチョからも聞いたが…。リュカよ、そのあたりのこと、聞かせてはくれまい か?」

 オジロンはそう言ってリュカに促す。サンチョがグランバニアを出てからしばらくのことを話し、続けてリュカが父とともにした旅のことを話す。そし てラインハットでの事件やその後の一人旅についても詳細を話した。

「そうだったか…つらい思いをしたな、リュカよ」

 話を聞いたオジロンは涙を流しながらリュカに言う。そして顔を上げたところでずっとリュカの隣にいるビアンカの姿を改めて眺めた。

「ところでリュカよ、こちらの女性は・・・?」

「わたしの幼馴染で、呪いのことも知っている方です。名前はビアンカ。実はわたし、結婚してビアンカさんを妻にもらいました」

 その言葉を聞いてオジロンが驚いてビアンカを見つめた。

「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。リュカの妻でビアンカと・・・」

 ビアンカはそこまで言って途端に口を押さえた。先ほどまでは少し顔色が悪そうなだけだったが、突如蒼白になって吐き気をもよおしていた。ビアンカ は苦しそうに咳き込むと力なく倒れこんだ。

「ビアンカ姉さまっ!?」

 すぐにリュカはビアンカを庇うように抱きかかえたが、ビアンカは気を失ってしまったらしく、力が完全に抜けてしまっていた。

 

 すぐにシスターが呼ばれ、謁見の間の上にある居住部屋のベッドにビアンカは寝かせられる。
 リュカはネッドの宿屋やチゾットでも同じようなことが起きていたことをシスターに話す。それを聞いてシスターは慌ててビアンカを診察する。
 オジロンによれば、まだ赤子だったリュカに産湯を使わせたのもこのシスターで、事情は知っていると言うことだった。そして、暫くビアンカを調べる と、少し安堵した表情になってリュカに向き直った。

「…無理をさせてはいけませんよ、リュカ様。まして、グランバニアの山脈越えなど、許せたものではありません」

 少し厳しい口調でシスターはリュカに言う。心配になったリュカは少しオロオロしながらシスターに訊ねた。

「そんなに重病に・・・?」

 心配そうに聞くリュカの表情を見て、周りで見つめる関係者も驚いた様子を見せたが、やがてシスターは笑ってリュカに呟いた。

「…呪いで女性になっているだけですから、わからないのは無理も無いですけどね。おめでとうございます、リュカ様、御懐妊ですよ。ビアンカ様はすこ し体調を崩しただけで、おなかの子も順調に育っていますよ」

 シスターに言われてリュカはきょとんとした顔でシスターを見つめる。心ここにあらずの状態になっていた。そんなリュカの肩をオジロンが叩き、リュ カの意識を戻させる。ハッとなってリュカはシスターの顔を見つめなおすと、シスターは改めて一回笑顔で頷いてくれた。

「ビアンカ姉さまに子供!?」

 リュカはそう言って喜んだ。
 それからビアンカが意識を取り戻すまでリュカはベッドの脇でビアンカを見つめていた。
 数時間後にビアンカは目を覚ます。正面にニコニコと喜ぶリュカの顔があり始めは驚き、何があったのかと訊ね、そこでビアンカは真相を知った。

「そうか、つわりだったのか・・・リュカが気付かないのは仕方ないね。突然旅を始めたからそれで体調を崩していたのかと思ったけど…。心配かけてご めんね、リュカ」

 ビアンカはニコニコしながら実は泣いていたリュカに優しく答える。

「そんなに軽く言わないでよ姉さま。…まさか本当に赤ちゃんが生まれるなんて・・・」

「そうしたら、リュカがお父さん?」

 泣き笑いしながら意識を取り戻したビアンカにリュカは、数時間も前に聞いた事実にまだ驚きが隠せないと言った様子でビアンカに言う。ビアンカは至 極もっともな質問でリュカに返すと、リュカもそれについては考え込んだ。

「立場的には…父になるんだろうけど、女の子な父と言うのも…ね?」

 リュカはそう言って複雑そうな顔をした。軽くビアンカの頭を撫でると、リュカはいつになく優しい声でビアンカにつぶやいた。

「姉さま、ありがとう。わたしでも男らしいことが出来た」

 ようやく止まった涙だったがそう言ったら再びリュカの頬につぅっと雫が流れる。

「もぅ、そんなに泣き虫だと赤ちゃんに笑われるぞ?」

 ビアンカが逆にリュカの頭を軽く撫でてリュカに呟いた。

「…姉さま、シスターから話を聞いたけど、身体に疲れとか溜まってるんじゃない?ゆっくり休んだ方が良いって言ってたし、ゆっくり寝てね。オジロン おじ様が話があるって言うから、わたしは続きを聞きに行って来るよ」

 リュカの言葉にビアンカは「うん」とうなづいてゆっくり目を閉じた。それを見届けたリュカは少し顔を引き締めて、階下の謁見の間に戻って行った。

 

 時間が遅いこともあったが、謁見の間にはオジロンと宰相以外は人払いしたときのメンバーしか残っていなかった。

「おお、リュカ戻ったか。嬉しい話で何よりだ。ところでリュカ・・・・・・」

 オジロンはそう言ってリュカを玉座の前に立たせる。オジロンは玉座から立ち上がりリュカの両手を握って話し始めた。

「わたしはリュカに王位を継ごうと思う」

 オジロンの突然の告白にその場に居た重臣たちは驚きの声を上げる。当の本人であるリュカは逆に唐突に言われたことでただ口をあんぐりと開けたまま 驚くだけだった。

「な・・・なにを申されます、陛下。そのようなことが許されるはずがありません」

 重臣たちの中でもオジロンの行動を止めるのは宰相だった。

「しかし、わたしはあくまで兄上の代役。兄上が戻らずもその子が戻ったのならば、リュカに継ぐのが道理と言うものではなかろうか」

 オジロンが言うと重臣たちの半分はその言葉に同意を示すが、より政治に詳しい宰相はあまり良い顔をしなかった。

「お言葉ですが陛下、リュカ様は中身が男であっても外見は女。女系の者は王位を継承することは出来ませぬ。典範にもそのことは記されておりまする、 故にリュカ様が王位を継承するのは男に戻られてからになります」

 宰相の言葉にオジロンは少し唸りはしたが、典範にも記載されていることでは、それに逆らうことは出来ない。

「叔父上、わたしからも王位については辞退させていただきます。このような身の人間に王位など無理ですし、なによりグランバニアの威厳にも響きま す。それに、わたしはまだ旅を止めるわけには行きません」

 我に返ったリュカはオジロンにはっきりとした言葉で告げる。それを聞いてオジロンは淋しそうな表情を浮かべた。

「しかし、そうなると女系の場合はどうしていたのだ?」

 オジロンの疑問にはやはり宰相が答える。その手には典範だろうと思われる本も持たれていた。

「女系の場合はその兄弟、そうでなければ王家と血縁関係の男子。かりにそれも駄目な場合は、その女子に婿に入った男子になられるかと。しかし、最後 のものに関しては一例もありませぬが」

 再びオジロンは難しい顔をする。

「現状では、ドリスに婿を取るか・・・・・・」

「仮にわたしの子が男子であれば、継承権はその子にあると言うことですね?」

 オジロンが難しく考え込んだところで、リュカが声を上げた。その声に対して宰相は頷いて見せた。

「となれば、男の子が産まれたとしたら継承が可能な歳までは叔父上にこのまま王を続けていただきたく存じます」

 リュカはそう言ってオジロンに対し深く礼をしてその意思を伝えた。

「リュカが男に戻ったら、と言うのは考えられぬのか?」

「はい、わたしはそのような地位に付けるだけの身分ではないと思っています。帝王学なども身に着けてはいませんし。子に一から学ばせて王位について もらうのが良いと存じます」

 オジロンは尚もリュカが王位に着くことにこだわったが、リュカはきっぱりとそれにたいしては断りを入れる。

「…それと、先王である父パパスからは遺言も受けています。旅を続け母を見つけ出せと。出来るならばこのまま旅を続けさせていただきたく、あわせて お願いいたします」

 パパスの名を出されては、さすがのオジロンも言葉につまらないわけには行かなかった。

「身勝手をお許しください、叔父上」

 リュカは小さな声でオジロンにそう謝る。非礼であってもここまで気遣いをするリュカにたいしてその願いを受け入れないと言うわけには行かなかっ た。

「そうか・・・。王を辞める機会が来たと思っておったのだが…わかった。みなにも宣言する、リュカに男子が産まれ継承権を得る歳まではわたしが王を 続けよう」

 オジロンはそう言って居並ぶ重臣たちに宣告した。

「リュカ様には一つお願いがございます」

 オジロンの言葉に納得した一同だったが、それを長い時間続けさせずに声を上げたのはやはり宰相だった。

「わたしにお願い?」

「はい。先王陛下の子であられるのは重々承知いたしておりますが、それでも王家の一族である証を得ていただかなければ、お子に継承も出来なくなりま す」

「あれは継承者が直接挑むものではなかったか?この場合、継承権を得た子が改めて挑めばよかろう」

 宰相は少し語気を強くしてリュカに王家の証の話をする。リュカには直接継承権がわたるわけではなかったが、外部から入ってきた扱いと同等の扱いを 受けるのだと宰相は言いたいようだった。オジロンは突然の言い出しに少し困惑していた。

「グランバニアの一族として今まで留守にしていたのも事実なれば、いままで一切かかわりがなかったのも事実。グランバニアの王族一族の証としてその 王家の証は必要なのでしょう?」

 宰相のほうを向いてリュカは訊ねる。その様子に一回しっかりと頷く宰相。それを見てリュカも納得したと言いたいように口元に少し笑みをこぼして頷 いた。

「わかりました。その間、ビアンカには部屋をお貸しいただきたい。それを了承いただければ、その試練お受けします」

「もちろんだ、ビアンカ殿については安全に経過を見守らせてもらおう」

 リュカが宰相とオジロンに向かって言うと、オジロンが慌てるように了承する。
 その様子を見ていた一つの陰が動く。それを見ていたのは宰相ただ一人だった。

 

「−−と言うことで、わたし自身が受け入れてもらうためにも、その王家の証と言うのが必要なんだ」

 翌日の朝。調子が少し戻ったビアンカは起き上がって朝日を浴びていた。そこに目を覚ましたリュカも来る。まだ暫くは過度の運動などは危険だった が、部屋を歩いたりすることは逆にちょうど良い運動として認められていた。
 昨日の出来事のあらすじを伝え、王家の証を取ってくる必要が出来たことをビアンカに伝える。

「そうなの・・・。けど、その宰相もリュカを信じられないと言いたいのかしら?パパスおじ様の娘…息子?のリュカだと言う証拠はオジロン様が認めた と言うのに…」

 ビアンカは尚もリュカに枷をはめようとしているように見えて、どうも宰相が気に入らない様子だった。

「…でも、叔父上の話では、一日かからずに戻ってこられる程度だそうだから、すぐに行って来るよ」

 リュカはそう言って剣を背中に背負い、準備を始める。

「気をつけてね、リュカ」

 準備が整い、リュカは試練の洞窟に向かう。ビアンカはそんなリュカの背中を少し不安そうに見つめていた。

 

 グランバニア城の東側に試練の洞窟はあった。小さな口を開けしかしその入り口は中へ入るのを拒むかのようにただ闇だけが包み込んでいた。馬車が 入っていけないのを確認すると、リュカは精鋭を選抜する。そこで選ばれたのはピエール、リンクス、スラリンだった。

「わがままを言って済まんの、リュカ殿」

 そう言うのはマーリンだった。本来であれば高い知識を有しているマーリンを含めた五人で挑みたいところではあったが、マーリン自身すでに相当の高 齢であり戦闘面では返って足を引いてしまうことが懸念されたため、自分から出られない旨をリュカに伝えていた。

「ん、まぁ仕方ないね。作戦参謀もいるから、それなりに悩んでくるよ」

「仕掛けがないとはとても言えないですしの」

 リュカも自信なくあやふやに答えると、少なくとも入る前から予想できることをマーリンは口にした。

「よし、じゃあ四人で挑むことにしよう」

 マーリンを欠いた分は特に補充することなくリュカは試練の洞窟の散策に入っていく。
 中は特殊な仕掛けの多い完全に人工の洞窟だった。入ってすぐに広間に出る。その広間は扇状に部屋が四つ存在していて、入り口の床には紋章が一つだけ 存在していた。その紋章のあるところのドアを開けると中は何もない部屋で、だが隣の部屋との間仕切りは一切ない一部屋だった。いったん全員で中に入 り、すぐに出ようとするスラリンをリュカは止める。別のドアに行ってみると先ほどの場所とは違うドアの床に紋章がある。
 パチンと指を鳴らしてリュカはその紋章のドアから出る。再びドアの外。別の場所に紋章。それを目印に入って別のドアの紋章のところから出てくる。先 ほどまでは洞窟の入り口に繋がっていた道が突然壁になり行き止まりになっていた。しかしリュカは特に愕然とした様子も見せず、ただ紋章だけを追いかけ ていく。何回か紋章の扉を出入りすると、壁になってしまった入り口は、地下に伸びる階段になっていた。

「…手間はかかるけど、簡単だね」

「…ですな、故に油断は禁物ですぞ、リュカ様」

「うん、みんなもね」

 慎重に道を辿るリュカの声が静かに響く。その声にピエールが頷くとリンクス、スラリンも頷いた。
 下の階はただ四角いだけのフロアだったが、先ほどの紋章が西側の壁に刻まれている。リュカがそっとその紋章に触れると音を立てて壁が移動し始める。 その先には階段。リュカたちは階段を下っていく。
 次のフロアの前半は簡単な迷路になっていた。

「…魔物が出ませんな」

 迷路を迷う中でピエールが呟くと、その肩に乗ってスラリンも「ぴきー」と鳴いて同意する。確かにここまで魔物の姿は無かった。フロア後半は水路の 細工があったが何度か流されながらも正しい道を見つけて階下に進む。
 そこは神殿のようになっていたが、中心にある道は半ばでなくなっている。その下は漆黒の闇で底は見えない。その向こうにも繋がる道があり、その先に 宝箱がある。その中に王家の証があると思われた。暫くそのフロアで行き来出来そうな場所をウロウロする。石柱のなかで一本意味深に折れているのを見つ けたピエールはその中にスイッチを見つける。それを押すと真ん中の通路がせり上がってきて道をつなぐ。

「まて、貴様ら!!」

 宝箱の直前まで行くと、後ろから声がした。振り返る隙を与えずその声はリュカたちに斬りかかってきた。

「みんな、散れっ!」

 リュカの号令で狭い通路の上での戦闘になる。だが、現れた魔物は単なる魔物ではなかった。

「…陰がない?」

 リュカが呟くと、正面に居座るオークキングがその槍を立てて名乗りを上げる。

「我が名はオークス。聖母マーサ様の親衛隊の一人だ。王家の証を奪いグランバニアを蹂躙しようと言うならば容赦はせぬぞ・・・!」

 オークスと名乗るオークキングはリュカに向かって槍を突きつける。だが、周りの様子を見てオークキングは少しの異常を感知する。

「なんだと、貴様、魔物使いか・・・?」

「そうだ、名前はリュカ。マーサはわたしの母だ」

 リュカは真剣な顔を見せてオークキングに言うが、その言葉を素直に受け入れてはくれない。だが魔物使いであることについては興味があるようで、 オークキングは腕試しとばかりにリュカに向かって槍を投げつける。その瞬間、ピエールはスラリンを投げてリュカの正面に落とす。スラリンは牙を見せて その槍を横から受け止める。獲物がなくなったオークキングにリンクスが引っかきに行く。オークキングはそれを避けるが、獲物がなくなり正面にはリンク ス、次にピエール、その次にスラリンそしてリュカと言う隊列が出来て難攻不落の状況が生まれる。

「無駄な殺生はしたくない。もし、ここで戦いを止めてくれるのならばこちらも手を出さない」

 リュカが言うと、全員が戦闘態勢を解く。その様子にオークキングは少し戸惑った様子を見せる。

「なぜだ、魔物相手に戦闘をしない意思など見せるものではないぞ!?」

 戸惑う姿を見てリュカはオークキングのそばまでやってきて、槍を返す。

「魔物だからと言っても、全てが全て悪さをするわけでもないし、あなたみたいな陰のない人を何人も見ている。…それに母様の名を知っているのなら ば、きっとミニモンと同じ境遇で母様についていたはず。そんな人を殺すわけには行かない」

 グランバニアへの洞窟で出会ったミニモンもマーサの名を出し、そしてグランバニアに寄り付く悪しきものを退治していてくれた。このオークキングも また同じような存在だとリュカは感じていた。

「グランバニアを蹂躙するような目的でここに来たわけではない。それを確認したければ一緒にグランバニアに来れば良い」

「…リュカ殿、と申したか。父君の名は何と?」

 力強くリュカがオークキングに言うと、相変わらず驚きの表情を浮かべたままでオークキングが尋ねる。

「パパス、パプスエリケア・ドラグレイエム・グランバニアだよ」

 そう言うリュカを見て、オークキングは槍をその場で投げ捨てると、リュカの足元に土下座をする。

「まさか、リュカ王子様ご本人とは露知らず、無礼の段お許しを・・・!」

「…?わたしを知っているの?」

「お生まれになったときすでにマーサ様の元にいました。パパス様から詳細を聞き、呪いをかけられた王子がいることも聞いております」

 オークキングはそう言ってリュカを見る。

「パパス様が旅に出るときに供を申し出たのですが、それには及ばぬと、代わりにグランバニアを守って欲しいと仰られ、王族に近づく不埒者を片付けて いた次第でございます」

 そこまで言うと、リュカは戦闘で緊迫していた空気を払うような笑顔を見せた。

「なるほど。直接ではないにせよ、父様と母様に関わっていた人なんだ」

「…リュカ様お一人、と言うことはパパス様はグランバニアに・・・?」

 リュカの安心した声を聞いて、オークキングも少し柔和したようだった。

「父様は殺された。魔族にね」

 そのオークキングから出た質問に、リュカは一切の隠し事をせずに真実を告げる。それを聞いてオークキングは怒りに顔が赤くなっていくようだった。

「パ・・・パパス様がお亡くなりになったですと!?しかも魔族が手を下したなど・・・」

 怒り心頭になったオークキングはギリリと奥歯をかみ締めて俯いた。

「リュカ様、我もお供させてください、パパス様の無念を晴らさねば気が済みませぬ!!」

「…ただ、勝手な行動などは慎むように。いいね?」

「はっ!」

 オークキングはそう言って自分からリュカの供に着くことを願い出た。猪突猛進とは言ったものの、それが制御できないようでは一介の戦士ではない。 リュカはそれを諭すように言った。
 オークスの案内で通路の反対側までやってきて、宝箱を開ける。中には王家の証が入っていた。それを手にとってリュカが振り向くと、見たことのない人 影が二人立っていた。

「なんと。我はリュカ様を疑っただけではなく、別の不埒者を招きこんでしまったか!」

 第一声はオークスの悔しがる声だった。それを聞いてリュカたちが一斉に武器を構える。

「ほほう、すでに敵対しているのは良い心がけだが、魔物ばかりが仲間のやつには帰って貰えねぇなぁ。あんたを消してくれって人もいるんでなぁ」

「リュカさんが王家の一族と証明されるのが嫌なやつも居るってことだよ」

 二人の盗賊と思しき連中は勝手に話を進めた。

「なるほど。グランバニアも何か異変があると言うことか」

 リュカが言うとそれを合図にして、ピエールとリンクスが飛び出す。一歩遅れてスラリン、さらに遅れてオークスとリュカがかかっていく。相手はバギ クロスなどの強力な呪文を使ってきたりしていたが、時間が経つにつれ、五対二の体制が不利になってきたのか早々に疲れが出てきている様子だった。
 完全にリュカ側有利になるとその盗賊たちは捨て台詞を吐いて逃げ出していく。
 何か良くない陰が動いている。リュカはここで初めてそれを意識し始めた。

 

 王家の証を得たリュカは早々に城に戻り、その証をオジロン以下関係者に見せる。

「リュカも無事に王家の証を手に入れた。これでリュカたちが王族と名乗るのも文句はなかろう?宰相」

 オジロンが宰相に言うと、ごほんと咳払いをして宰相が言葉を続ける。

「これは心外な。私はあくまでしきたりを守るべきだと申し上げただけですぞ」

 少し焦ったように宰相はそう言うと感づかれないようにすぐに姿勢を正した。

 

 この時を機に、リュカは自分の出生の秘密をグランバニア全国民に伝える。
 パパスの子が男として帰って来たことを明らかに、また契りを結んだビアンカには子が宿っていることを公にした。これはリュカ自身が決断したことで、 これから生まれる子たちにいらぬ火の粉が降りかからぬようにするためのものだった。いまだリュカは呪いが解けずに女性体であること、またリュカは直接 王位を継がずに正当な子に王位を譲った事などを公表した決断は、偉大な判断として国全体としてそれを否定する空気を振り払った。

「いつかは男に戻らないとだもんね」

「でも、リュカが男だろうが女だろうが、誰もがリュカ様って呼び慕ってくれるに違いないわ」

 決断を聞いたビアンカは初めは反対していた。だが実際に蓋を開けてみるとリュカへの批判、リュカを否定する声などはごくわずかで、それも歓迎ムー ドに淘汰されてしまったことに驚いていた。
 そしていつの頃からかリュカのことをグランバニアでは「姫王(ひめおう)」と呼び、オジロンと共に、そして幼き王と共に、王位になくとも政に着手し ていたことを誰もが称えるようになった−と言うのは、またのちの話。

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