1.テルパドール

 

 山奥の村を出発してからポートセルミまでは少し遅いペースで進む。旅慣れしていないビアンカの調整も含めてのことだった。時間をかけてポートセル ミまで戻ると、再び馬車を街の外に止めて待機してもらい、リュカとビアンカは街の中に入って行く。

「ここまで歩いてきて大丈夫でしたか?」

 リュカが心配してビアンカに訊ねる。ビアンカ自身も山奥の村で山の中をよく駆け回っていたということだったので、歩くことも体力面でもさして心配 はないと思われたが、魔物がでる街の外は緊張の連続だったのではないかとリュカは感じていた。

「大丈夫よ、心配してくれてありがとう。皆にも馴れたしね。リンクスがリュカが居ないときはずっとくっついてくるのよね、身体は成獣でもまだ子供な のかしら?」

 戦闘にはリュカとピエール、リンクス、コドランが出ていることが多いが、ビアンカが馬車内にいるときはリンクスもくっついて馬車に居ることが多 かった。戦闘でリュカが出ているときは率先して出てくるし、普段はビアンカを、戦闘でビアンカに危険が及ぶとすぐにビアンカのフォローに出るなど、リ ンクスは人間以上に周りを良く見て時にはコンビネーションを駆使してリュカとビアンカを主に守る体制を作っていた。

「リンクスは随分頭がいいんだと思いますよ。だから回りも良くみています。時にはわたしでも気付かない事にまで気を配っていますから。リンクスとピ エールには助けられっぱなしです」

 リュカはそう言って仲間を称える。ビアンカもその点については同じ気持ちだった。それ以上にそのようなまとめ方が出来るような仲間を集めたリュカ にも、ビアンカは感心していた。
 ポートセルミはルドマン所有の船があると言うことだったが、すぐに港には向かわずに一泊してから出るとリュカは言っていた。ビアンカは行程にはとく に口出しもせずにリュカの後を付いて歩いていた。ポートセルミの中でも上級クラスに入るような宿にリュカは宿泊手続きをとる。

「…リュカ、大丈夫なの?結構高そうだけど・・・」

 ビアンカは手続きが終わったリュカに訊ねる。宿は二階から上が宿泊施設で、一階は食堂と酒場、ステージが設置されていた。

「大丈夫ですよ、そんなに料金はかかりません。…それと知り合いが居るんで、ここを利用するんです」

 リュカはそう言ってステージ近くに居る関係者に声をかける。初めはリュカの様子を見ていぶかしげな態度だった関係者もリュカの一言ですぐにステー ジ奥に姿を消す。暫くして、ステージから華やかに着飾ったリュカと同じくらいの歳の女性が出てきた。

「リュカ!!」

 その女性はリュカの姿を見るとリュカに飛びついてくる。それを見て少しビアンカは睨んだりもしていたが、活発な女性の姿とわかると少し場違いな感 じもした。そしてその女性にビアンカ自信も抱きつかれていた。

「リュカ、この人は?」

「この宿の踊り子さんでクラリスさん。初めてポートセルミに来た時に随分とお世話になったんだ」

 クラリスに抱きつかれて姿勢を崩したビアンカが、床に横になったままの状態でいまだ離れる様子のないクラリスを指差してリュカに訊ねた。

「久しぶりじゃないリュカ。サラボナまでは行って来たの?」

「はい、あのあとルラフェン経由で行きました。親友とも会えましたし、伝説の盾と言うのも無事に譲り受けることができました」

 ようやくビアンカから離れて立ち上がり、クラリスはビアンカに手を貸しながら立ち上がりリュカに訊ねる。リュカはサラボナでの出来事を簡単に伝え る。

「で、この綺麗なお連れは?」

「わたしの幼馴染でビアンカさん。色々と事情があって一緒に旅をすることになったんだ」

 リュカはそう言ってクラリスにビアンカを紹介する。優雅にお辞儀をしてクラリスもビアンカに自己紹介する。

「また今夜もお世話になれたらって思ったんだけど」

「ええ、良いわよ。私の上客はリュカしか居ないからね」

 そう申し出たリュカにクラリスは快く承諾してくれた。
 クラリスがステージの準備に入り、リュカとビアンカは酒場で情報収集をする。だが、これと言って有力な情報は得られなかった。ステージを見ながら食 事をして食事の途中でステージは一応全ての演目を終了する。

「お待たせ、リュカ、ビアンカさん」

 ステージ衣装ではなくドレスを身にまとったクラリスが二人の席にやってきた。

「なにか良い情報でも仕入れられた?」

 クラリスは出された酒を飲みながらリュカに訊いた。リュカは首を振ってそれを否定する。しかし落胆しているわけでもないようだった。それをみてク ラリスも少し安心したようで、グラスを置いて軽く息をついた。

「次はどこに行く予定?」

「ポートセルミから南に航走って、砂漠の国テルパドールまで」

 リュカの言葉にクラリスが一瞬動揺する。それをリュカもビアンカも見逃さなかった。

「テルパドールになにかあるの?クラリスさん」

 間髪置かずにビアンカが質問するがクラリスは口を開こうとしない。「んー」と少し唸ったリュカがパンと手を叩いてクラリスに言う。

「もしかして、クラリスさんの故郷?」

 リュカの問いにクラリスが身体を硬直させる。口で答えなくてもそれが正答であるのは質問したリュカも、隣で見ていたビアンカでもよくわかった。

「…そっか、テルパドールに行くのか。ね、リュカ、伝言をお願いしたいんだけど良い?」

 隠していたことがばれてがっくりと首を落としたクラリスだったが、すぐに顔を上げると明るい声で言う。

「テルパドールの武器屋が実は実家でね。妹がいるんだけど・・・・・・」

「駄目だよ、クラリスさん。休めないのはわかるけど、自分の口できちんと報告しなくちゃ。じゃなかったら、手紙でも書かなくちゃ。黙って出てき ちゃったんだよね?」

 伝言を依頼するクラリスを見てリュカはその申し出を断る。

「なんで?」

 むっとした顔でクラリスがリュカに訊ねると、リュカは首を振ってクラリスに説明する。

「黙って出てきたならなおさら、自分の安否は自分で伝えないと。心配してると思うよ?クラリスさんがポートセルミに居ると言うのは伝えるけどさ、伝 言は駄目」

 リュカが断言するとクラリスはクスクスと笑い、何度か頷いた。

「うん、そうだよね。リュカみたいな身の上じゃないんだし、今度休みでも取って行くことにする。妹に姉が帰ると言っていたってだけ、伝えて」

 同じような伝言にはなってしまうが、リュカはこの程度のことであれば了承した。
 それからはルラフェンやサラボナであった出来事などを話し、ビアンカが探していた幼馴染であることなどを話して夜は更けていった。
 翌日、クラリスに挨拶して、リュカとビアンカは港へと行く。
 係留している船は定期船以外にも豪華な船ばかりで、リュカもビアンカも驚きを隠せないで居た。その中でも一際目立つ豪華な、だが他の船とは少し違う 船を見つける。見ると、サラボナのルドマン邸で見かけた紋章が幾つかちりばめられている。それがルドマンから借りる船だというのはすぐにわかった。
 桟橋のところでは、一人が非関係者が勝手に出入りしないように見張っていて、船のクルーたちが航海に備えてなのか頻繁に荷物を運び入れていた。

「あの、わたしリュカと言いますけど、この船はルドマンさんの船ですか?」

 見張り役をしていた一人に声をかける。きょろきょろとしていたところを見ると、リュカを探しているようだった。

「おお、あんたがリュカさんか、ルドマンさんから話は聞いてるよ。今はまだ荷を積んでる最中だが昼くらいには終わるから、そうしたら出航できるよ」

 そのクルーはそう言ってリュカたちに挨拶する。

「馬車は積めますよね?」

 少し心配気味にリュカが訊ねる。と言うのも船自体が横に大きな船ではなく、縦に長い船でデッキも見た目にはあまり大きくないように思えたからだっ た。そこまで理解しているのかどうかはわからなかったが、クルーは笑ってリュカに言った。

「ああ、全然大丈夫だよ。定期船と同じくらいに荷は詰めるから安心しな」

「あと、仲間が居るんですが…実は魔物たちなんです、悪さは絶対にしません。乗せてもらえますか?」

 少し心配そうにリュカが言うと、クルーの一人がニコニコしながら近づいてきた。

「ほほー、って事はお姉ちゃんは魔物使いか。今は少なくなっちまったが、俺なんかは定期船に乗ってる頃から何度か見たことあるぜ。大丈夫、みんなも 魔物使いの存在は知ってるからな、初め慣れるまでは仕方ねぇがすぐに慣れるさ」

 リュカを感心しながら見つめるクルーは嬉しそうに言った。リュカも魔物使いの存在を知っていてくれてホッとした。

「では、仲間を連れてきますね」

 リュカは一礼して一度港から離れる。
 街の外で待機していた仲間たちに事情を話して、船まで向かう。
 航海に必要な荷を積み込んで、リュカたちを乗せた船は一路テルパドールを目指して出港する。

 

 

 テルパドールはそれ自体が島になっていてその島は全体を砂漠が覆っていた。島の北側に船を付け上陸したリュカたちだったがそこからテルパドールの 城まで行くのに苦労した。魔物自体は強くないのだが、砂漠に照りつける太陽の強さと乾燥しきった空気、砂塵を纏った風とで体力が殺がれて行く。
 上陸してから一週間程度を費やしてようやくテルパドールにたどり着く。フローラの話では天空の勇者を奉った墓があると言うことだった。天空の勇者の 手がかりだけでも掴めればと思っていたリュカは良い意味で裏切られることになる。
 テルパドールは代々女王が治める国で、その女王の力は偉大だと言う。国の誰もが女王に会い、国の誰もに女王は会った。それは旅人も例外ではなく、訪 れる旅人に顔を会わせていた。
 衛兵に女王への謁見を申し出ると、謁見の間ではなく地下にある庭園に通される。

「地下にこの様な庭園があって驚いただろう。これも女王様のお力の賜物なのだよ」

 衛兵はその庭園を見て驚いているリュカとビアンカに告げた。
 庭園は砂漠の中と違って程よい湿度と気温になっていて、全体が芝で覆われている。水脈から引いたのであろう水は小川を造り、その脇には花畑なども出 来ていて、蝶や小鳥といったものまでこの庭園では過ごしていた。
 その庭園の中にあるテーブルセットで優雅にお茶を飲んでいるのが女王アイシスだった。

「わたくしがテルパドールの女王、アイシスです」

「わたしはリュカと申します。こちらはわたしの連れでビアンカです」

 アイシスがお茶を飲むのと同じように優雅な口調で自己紹介する。リュカはそんなアイシスに目を奪われながら自分とビアンカを紹介する。

「…リュカとビアンカですか。…あなた方からは何か強く求めるものを感じます」

 アイシスはすっと瞳を閉じるとリュカとビアンカの方を向いて静かな声で呟く。

「こちらに天空の勇者のお墓があると言うお話を聞いて参りました。お通しいただけますか?」

 リュカも丁寧に申し出ると、アイシスはにっこりと笑顔を作ってリュカに頷いて見せた。

「わかりました、では付いて来て下さい」

 アイシスはそう言うと、リュカとビアンカの先頭に立ち別の場所に移動する。
 城の左にある小さな神殿にアイシスは二人を導く。幾つかの階段をくだり、質素な部屋に通される。

「これは・・・もしかして、天空の兜?」

 その部屋の真ん中にはきらびやかに飾られた台座があり、その上には天空の剣や盾と同じ独特の意匠でかたどられた兜と言うよりは冠に近い物が置いて あった。それを見てビアンカが声を上げた。

「ええ、その通りです、ここにあるのは天空の兜。ですがそれが何であるかわかる人は少ないのです。あなた方からは勇者様を求める、もしくは勇者様に あるようなものを感じます。…その兜をつけてみてください」

 アイシスから直々に言われて、ビアンカは少し困惑する。だが、リュカはその言葉に従って天空の兜を手にとろうとする。だが、これまでの天空の剣、 天空の盾と同じように、重たくて持ち上げることも出来ない。かろうじてわずかだが動かすことが出来た。その様子を見てアイシスの顔も驚きの表情にな る。次にビアンカが持つと、兜は持ち上がる。だが、高々と掲げるのは困難で、なんとか手で持つだけが可能だった。

「動かす、いや持つことが出来るなんて…。ですが、あなた方も勇者様ではないようですね」

 少しがっかりした様子でアイシスは呟いた。

「…では、庭園に戻りましょう。ビアンカさん、兜を元の位置に戻してください」

 アイシスに言われてビアンカは元置いてあったように天空の兜を戻した。アイシスについて再び地下庭園にリュカとビアンカは戻ってきた。

「見ていただいたとおり、ここにあるのは勇者様のお墓ではありません。今まで兜に触れて誰も動かしたものは居ません。なのであくまで装飾と思わせ、 それが奪われないようにしています。あなた方からは勇者様を強く思う気持ちがあるようです。…もし、よろしければ、事情をお話しいただけませんか?」

 リュカは小さな頃に父について旅をしていたこと、その時にラインハットで起きた出来事、その後の誘拐と謎の神殿での出来事、そして抜け出すことに 成功していま、再び父の意思を継いで旅をしていることを話した。

「そうでしたか。失礼ですがリュカさんは別の名を持っていたりしますか?」

「別の名…ですか?」

 突然アイシスが質問してきて、リュカは首を傾げる。リュカは魔物使いと言う身ではあるが、二つ名や別の名を持っていることはない。その旨を伝える と今度はアイシスが首を傾げる。

「リュカさんはいつの頃からお父上と旅をしていたのですか?」

「物心付いた頃には父様とサンチョと言う従者の方と旅をしていました」

 そうリュカが説明すると、アイシスの表情が変わる。それを見てリュカも少し不安そうな顔に変わった。

「サンチョさんですか?では、そのお父上と言うのはパパスという名ではありませんでしたか?」

 一方のアイシスは少し興奮したような表情でリュカに問い詰めてくる。アイシスの口からパパスの名を聞き、リュカも驚き、ビアンカも口に手を当てて 驚きを隠せない状態だった。

「パパス・・・はい、父様の名はパパスと言います」

「そうでしたか、パパス王の子でしたか」

 リュカがアイシスの問いに答えると、アイシスも納得したように呟いた。だが、その言葉にリュカは少し違和感を覚えて考え込む。

「…王?パパス王とおっしゃいましたか?」

 その違和感にたどり着き、リュカはアイシスに訊ね返す。アイシスは不思議そうにリュカを見つめて、自分の知る情報を教えてくれた。

「ええ、ここから遥か東の地、グランバニアと言う国があります。パパス王はそのグランバニアのパプスエリケア・ドラグレイエム・グランバニア陛下で す。パパス王もここには天空の兜を見学しに来ておられます。その時、サンチョと言う従者と一人の赤子を連れていました。その赤子は・・・」

「わたし、ですか?」

 アイシスが言う言葉に聞き入る。その父と思しき王は赤子を連れていた。その赤子が今までの話では自分だと言うことになる。リュカはその父の名を思 い返しながら話を思い出していた。

「おそらくはそのときの赤子はリュカ殿ではないかと思われます。わたくしもその赤子のことは聞けずじまいでしたが。…それで、パパス王はどうされた のですか?一緒では・・・?」

 少し歯切れ悪くアイシスがリュカにその赤子のことを話す。なにかの手がかりがあるわけではないが、グランバニアのパパスがリュカの父と同一人物で あれば、その赤子がリュカであることは間違いない。そんなことを考えるリュカにアイシスはパパスの所在を訊ねる。

「父様は・・・」

 リュカはすでに父が亡くなっていることをアイシスに伝える。アイシスはリュカから聞いた事実に少しのショックを感じたようだった。暫く目を伏せて その事実を受け入れようとしているようだった。
 暫くしてアイシスが顔を上げて言葉を続ける。

「そうでしたか。…辛いことを聞いてしまいすみません。…リュカ殿、一度グランバニアにお戻りなさい。パパス王があなたの父であるかの確認も出来ま すし、仮に父であればグランバニアに父の残したものが多く残っているはずです」

 静かにアイシスはそう言ってリュカへの道しるべを示した。

「リュカ、行ってみよう、グランバニアへ」

 アイシスの言葉にビアンカも同意する。リュカはその言葉を聞いて力強く頷いた。

 

 アイシスとの謁見を終えて、リュカとビアンカは城の外に出る。

「に、しても。女王様と話をすることになるなんて思いもしなかったよ」

 ビアンカはアイシスと謁見して少し驚いている様子だった。

「あんなに簡単に会えるもんなんだね、緊張しすぎてなにもしゃべれなかったよ」

 思い出しながらビアンカはリュカに告げる。そんな様子を見てリュカは少し笑ってみせる。

「そんなことを言ったら、わたしなんかラインハットのデール王とはタメ口で話ができる仲だよ?」

 そう言うリュカを見て、ビアンカは更に驚いた顔をする。

「…そうだね。それにグランバニアの王様がパパスおじ様だったら、リュカは姫様になるんだもんね」

 驚きの連続でなんとなく顔がゆがんだような感触を覚えたビアンカは頬を両手で覆い、揉み解すような動作をする。
 二人はそうして城下街まで戻ると、今度はクラリスの実家である武器屋を探す。
 商店自体は少なく、すぐに武器屋は見つかった。中に入って見ると旅人たちが集まっているようでその店は繁盛しているようだった。

「さて、ここがクラリスさんの実家、かな?」

 ビアンカはそう言って店の中を見回した。まずは客として武器の新調のための買い物をする。そしてそのまま武器屋の店主にリュカが訊ねる。だが、店 主は知らぬ存ぜぬを通して結局リュカの質問には答えてもらうことはなかった。

「う〜ん、困った。クラリスさんからは武器屋としか聞いてないからな・・・」

 腕を組んでリュカは少し唸る。その様子を見ていたのか、店の外で見知らぬ少女が手招きする。リュカとビアンカはその手招きする少女の方に行って見 た。

「お姉ちゃんたち、クラリスお姉ちゃんを知ってるの?」

 その少女はリュカたちが店から出ると、すぐに店の裏手の方に連れて行く。そして開口一発こう訊ねてきた。

「ええ、知ってるけど…あなたは?」

 話を聞くと、その少女がクラリスの妹らしい。年齢はリュカよりも全然下だったが、確かに少し挙動不審な部分はリュカのそれと良く似ていた。妹の話 では、クラリスが家を出た理由のひとつに店主である父との喧嘩が原因であったと言う。そしてクラリスが本当に出て行ってしまったら父の方も意地を張っ てクラリスのことを気にしなくなってしまっているのだという。

「なるほど、だからクラリスさんはしきりに『妹』を強調していたのか」

 妹の話を聞いてビアンカが納得したように頷き、リュカもそれに同意した。

「いま、クラリスさんはテルパドールのずっと北にあるポートセルミって港町に居ます。そのうち家に戻るそうですから、一人で訪ねようとはしないでく ださいね?」

 丁寧にその妹にリュカはクラリスのことを伝える。妹はそのあたりはしっかりしているようで、リュカの言葉に頷いて同意を示す。

「クラリスお姉ちゃんはいま、なにをしてるの?」

「クラリスさんは踊り子さんをされていますよ」

 リュカは妹の質問に尚も丁寧に答える。踊り子の言葉に反応して妹は明るい笑顔を見せる。クラリスは家を出る前から踊り子になるのが夢だったそう で、いまその夢が叶っていることに喜んでいたのだ。
 クラリスのことを妹に伝えて、リュカとビアンカはその場を離れた。これでクラリスからの依頼もこなした。後は一晩程度休み、一路グランバニアに向か うことになる。

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