7.新たな旅立ち 〜二人のルビスと女王〜

「お疲れ様、竜の女王。ですけど…貴女の本当の冒険、そして役目はこれからですよ」

 精霊ルビスはこう言った。目の前の女性−竜の女王の姿が徐々に薄くなり、最終的に消えた。それを精霊ルビスは見守っていた。そして次の瞬間、精霊 ルビスの背後でドサッと言う音がした。

「ってててて・・・」

 まだ幼い、黒髪で多少癖のついた長い髪の少女が、精霊ルビスの後ろでお尻をさすっていた。

「思ったよりも可愛くなりましたね、竜の女王?」

「・・・なっ!?せ、精霊ルビス!って、ここはさっきまであたしがいた城じゃないか。…ん?って、なんだこの格好は!!」

 竜の女王と呼ばれたのは、まだ8歳程度の少女だった。目つきや仕草は先ほどまで玉座に座って精霊ルビスと話をしていたあの竜の女王だったが、いま 目の前に居るのは「女王」と呼ぶには幼すぎる少女。

「クスクス・・・可愛いですよ、竜の女王」

「…からかってるの?それになにが目的!?さっき、本当の冒険がどうとか言ってた様だけど」

 精霊ルビスは、その端整の取れた女性とは思えない幼い笑い方や仕草をしながら、目の前の少女にそう言った。一方の少女は、本当にそれまでの竜の女 王かと疑うほど、明朗活発でハキハキとした印象を持たせた元気一杯の少女だった。

「からかってはいませんよ。貴女が願う姿に転生させてみたら、その格好だったというだけです」

 精霊ルビスの言葉に、少し驚いて見せた竜の女王。だが、改めて自分の姿を見て一回大きな溜息をついた。

「あのさぁ、せい…あー、面倒くさい。ルビス、確かにあたしはこんな子供の元気さが今の自分にあったらなぁとかってことは考えたさ。だけど、言動か ら、考え方から全て少女にしちゃうって言うのはなにか間違ってない!?」

 竜の女王はそう言って、もう一度その姿を精霊ルビスの前に晒す。今の格好は、ところどころがほつれた、いわゆる旅人の服に大人用のマントを長く 余った分だけ縛り半ば引きずるような感じで身につけていた。大理石で磨かれた床にはとても幼い少女の格好をしている自分の姿が写り、何かが違うと溜息 や呆れ顔と言った、表情豊かで言い換えれば落ち着きの無い少女だった。

「正反対ですね、その玉座に座っていた頃と・・・」

 精霊ルビスは、今度は笑わずにまじめな顔で言う。すると、竜の女王は照れ隠しなのか、頭をかいて、精霊ルビスの顔を見上げた。

「…ま、竜の女王の血があるとわかって、そのドラゴンの女王たる教育を受けるまでは、こうだったのは認める。が、ここまでしっかりと引き継がせなく たっていいじゃないか」

 竜の女王は恥ずかしそうな表情をしながら、だが精霊ルビスには食って掛かるような勢いで文句を言った。

「でも、今までの全ての教養はいまのあなたの中にもしっかりと持ってもらっていますよ。なので大丈夫です。後は自由に振舞っていただければ」

「・・・まったく、あたしを何だと思っているんだ…。で、なにをさせようと言うんだい、ルビス」

 精霊ルビスの言ったこと、今まで自分が竜の女王として、この世界で人間を守っていたことや、大魔王の手先が支配してきたこと、勇者と謁見したこ と、自分の分身たる卵を別世界に産み落としたことなど、これまでの経験は全て記憶として残っていた。もちろん、まだ若く女王と呼ばれる以前の姿の自分 のことも同様だった。
 一つだけ違うことそれは、今の姿は「人間」であること。今までは「人間を模っていた」のであり自分はあくまでドラゴン族だった。ここが最大の違いで あった。自分を人間にしたこと、それが何かを精霊ルビスがたくらんでいるとしか竜の女王は考えられないでいた。

「その前に、少し時間をください」

「じゃあ、その間に別の質問だ。人間になったということは、あたしは年を取って死んでいくことになるのか?」

 精霊ルビスは首をかしげながら、本当は起こるであろう変化を待っていた。だが、それがなかなか起こらずにどうしたものかと考え込んでいた。その様 子に気付きはしたが、竜の女王は自分を弄ぶ精霊ルビスのやり方が気に入らず、愚痴の一つでも言ってやろうと思って質問攻めすることにしていた。

「…貴女は年は取りません。が、これからの冒険次第では、すぐに死を迎えるかもしれませんし、長き時間を旅するかも知れません。それは行った先で何 が起こるか次第です」

 精霊ルビスはそんな、ちょっと無責任とも取れるような言葉を口にした。当然、竜の女王がそれに納得するはずもなく、精霊ルビスの顔を睨むように見 上げた。

「投げやりな言い方だね、ルビスほどの方が…」

「これから貴女には、私の血族の一人を従者につけます。行ってもらう先は、私も行ったことのない、まったくの別の時空です。貴女が卵を産み落とした のと時を同じくして、その時空にどこからか卵が現れました。それがどのように、どうなって育っていくのかわかりませんが、そのあたりのことで、誰かが 呼んでいるんです。ほかにも何か起きているようなのですが…例えば『精霊』と言った存在がその時空にはいないか、表には姿を出していないようなので す。それゆえ、世界が乱れる危険がある、と言うことのようなのですが、それ以上のことは、私でもわからないのです」

 精霊ルビスは、先ほどまでの楽しむ様子から一変して、真剣な顔で竜の女王にそう話す。聞きながら竜の女王も、言葉の端々で頷いたり考え込んだりし ていた。

「そこまでわかっているということは、それ以上のことがあると考えるのが都合がいい。それに、そんなだけでわざわざこちらの時空の『精霊』を呼んだ りはしないはず。一人で行けと言わなかった分だけ、こちらも譲歩しよう。だが…血族と言うことは、精霊なんだよな?」

 竜の女王がそこまで言うと、そこに居る精霊ルビスではない声が突然響き渡る。

「あたしは精霊ルビスの血族だけど、精霊になり損ねた人間。ルビスの初めての地、クーファヴィーグルで生まれ育った者だよ」

 玉座の真上辺りが突然暗転する。そして、その黒い渦の中に少しずつだが何かが近づいてくるのが確認できた。そして、暫くするとその玉座の前に一人 の少女とも女性とも言えない年の女性が降り立った。

「お久しぶりです、母上」

 その女性が丁寧に頭を下げる。女性の言う言葉に、竜の女王は驚いた顔をした。

「はっ、母上ぇ〜!?」

 確かに突如現れた彼女は、精霊ルビスを母上と呼んだ。

「久しぶりですね、ティラル」

「…落ちぶれた精霊とか、未熟な精霊とか、成りそびれた精霊とか、好き勝手言う親ですけどね」

 母と呼んだことに驚いている竜の女王に対して、ティラルと呼ばれた彼女はムスッとした不機嫌そうな顔をして、竜の女王に言って見せた。

「あたしの名前はティラリークス・ルビーサナート。本来なら、母上の次代の精霊ルビスのはずなんだけど、残念ながら色々あって、若くして死んでし まってね。精霊になりそびれたんだ」

 ティラルと名乗った彼女は、幾分ボリュームのある髪を後ろで一つにまとめ、その髪を隠すかのように布で頭を巻いている。そして「二本の剣」をその 背に背負っていた。そのティラルは舌を出して笑いながら竜の女王に自己紹介した。

「…ルビーサナートと名乗る人間に会えるとは思わなかった」

 竜の女王はそう言って、驚きを隠さずに呟いた。

「基本的に、どういう形であれルビーサナートを名乗るのは、私たちの祖が創ったクーファヴィーグルだけですからね、貴女が最初で最後でしょう」

 精霊ルビスはそう言ってティラルのほうを向いた。

「事の次第は伝えたとおりです。彼女のサポートと、行く先の事象をお願いしますよ」

 ルビスはそう言って、ティラルの肩をたたく。

「話が前後しちゃったけど、目的は、あたしたちが見知らぬ時空で起きる出来事の解決。それに対してはもう何百、何千年かけて片付けようと問題はない ですよ、竜の女王」

 ティラルがずいぶんとアバウトに話しかけてくるので、竜の女王は少し面を食らったような表情をしていた。だが、言っている事自体は納得できたの で、ぎこちなく頷いて見せた。

「…女王、と言うには、若すぎますけどね」

「…ティラルと言ったか?口の悪さは母親譲りか?一言多い」

 ティラルはまじまじと竜の女王の姿を見て付け足したが、確かに当人からしてみれば多い一言だった。ムッとした表情をして、竜の女王はティラルを見 つめた。
 精霊ルビスとは違い彼女は人間だったが、口が悪そうかと言えばそうではなく、見た目はとても可愛げのある活発そうな姿だった。そして、笑った顔は見 方によっては子供のようにも若い女性にも、そして年配の女性のようにも見て取れることができ、浮かべる表情もどこか不思議な雰囲気を出していた。竜の 女王はそのティラルの姿にしばし見とれた。

「では、後はお願いしますよ、ティラル」

「はい、承知しました母上。…もし、会えるようなことがあればまた、その時に」

 精霊ルビスの言葉に、ティラルは意味深な言葉を返した。そして、気付かないうちに小さくなっていた小鳥に何かを言うと、その鳥は、精霊ルビスが現 れた時と同じように、また巨大化した。

「さよなら、ラーミア」

 ティラルは伝説の不死鳥・ラーミアに一言挨拶をした。ラーミアはそれを聞き届けたのか、ピィッと一回鳴いて、精霊ルビスを乗せ何処かへと飛び立っ ていった。
 竜の女王の城には、ティラルと竜の女王の二人きりになった。竜の女王はティラルを見つめて、「ふぅっ」と溜息をつく。

「『会えるようなことがあればまた、その時』…か。と言うことは、その会える様な時と言う可能性は少ないということだな」

 竜の女王はそれだけ言うと、ティラルに不躾な笑みを浮かべる。

「怒ってるんですか?でも、こちらで遣り残したことはもう無いでしょう。安心して別の時空に旅立てると思うのですけど?」

 ティラルは真剣な竜の女王に対して、あまり気圧された感じもなく答えた。その様子を見て竜の女王は(ああ、コイツには敵わないんだろうな)と何処 かで感じていた。

「ま、いいか。確かに遣り残したことはない。それにあたし自身はもう、別の卵に未来を託したからな」

 竜の女王はそう言って目を伏せる。仮に出来ることならば、その未来を託した卵の行く末を知りたいと思っていたが、すでに一度命の灯火は消えた身。 それは願わないことなんだろうと感じていた。

「…母上の新世界は、それなりに発展しますし、色々と問題ごとも起きますが、最終的には勇者たちによって収束します。それに、その勇者たちは、クー ファヴィーグルまでも救ってくれましたからね」

 ティラルは竜の女王が想像していたことを見透かしたような感じで、そう言う。

「・・・あの新世界の並行時間を未来まで過ごし、亡くなってからここに召還されたのか?」

 竜の女王は、混乱しそうなことをさらっと言う。ティラルは嬉しそうな顔を見せて一回頷いた。

「でも、あの卵がどうなるかは言えません」

「ああ、そのくらいはわかっているさ。例えもう、存在しないといっても、精霊たちと同じ扱いを受けた、天上界の住人だ。干渉することで何が起こるか はわからないし、知ってしまって決められた未来を変えてしまうのもまずいからな」

 ティラルがニコニコと笑いながら言うと、竜の女王も少し笑みを浮かべてティラルに返答した。

「で、あたしたちはどうするんだ?」

 ティラルと二人残され、いまわかっていることは「別の時空へ行くこと」のみ。だがその方法なども竜の女王は聞いておらず全くわからなかった。

「この城に、別時空に繋がる穴ができているんです。その先から、呼ばれているのだけはわかるんですけど…正直、それ以上は何もわからないんです。だ から、どんな魔物が出るかさえわからないし、果たしてその別時空に辿り着けるかさえ、怪しいです」

 ティラルは少し、神妙な面持ちで竜の女王に呟く。
 一方の竜の女王は、ティラルのその言葉に対しても、特別様子を崩すことなくただ聞き入っていた。そして、自分の視線の先にある、ティラルの腰辺りを ポンと一回たたく。

「辿り着くとか着かないとかは、いまから考えることじゃないさ。行ってみなけりゃわからない。だから、行こう。その先のことはまず、その時空とやら に辿り着いてから考えればいいさ」

 無邪気な笑みを浮かべて竜の女王はティラルに言う。こうしていても仕方がないとでも言いたげな感じでもあったが、ティラルはその竜の女王にうなず いて見せると、竜の女王の居城を歩き出す。

「…いつ、その時空への穴がつながったんだ?感覚としては全く認識できてないんだけど」

 自分のそれまでいた城であり、ましてやこの世界の人間を見守っていた竜の女王ほどの者が時空の裂け目ができたことを認識できないはずは、通常では ないはずだった。だが、今回は完全にその感覚を掴み取ることは出来ないでいた。

「たぶん、本来の竜の女王が消滅して、精霊ルビスが再び人間としての竜の女王を召還している間、だと思います。だから、今回あなたが認識できなかっ たのも無理はないです」

 ティラルはそう言って、城の北の区域のほうに進む。

「…と言うか、今でも認識できない。と言うのはやっぱり、人間になったから?」

「それも、あるかも知れませんね。その辺のことは正直あたしでもわかりません」

 ティラルはそう返しながら、少し竜の女王に変化があったような気がして首をかしげた。特別、竜の女王の姿に変化はなく、相変わらず幼い姿をしてい た。だが、一箇所だけ違う場所を見つけた。ティラルがそのことを聞こうとすると竜の女王はニコニコしながら人懐っこい感じの口調で話し出す。

「これが気になる?」

 そう言って竜の女王は背中に背負った、一振りの剣をティラルに見せる。澄んだ緑色の刀身はこの世界には珍しい片刃の剣で、刀身自体は凄く細く作ら れている。また、その刃には波紋まで浮かび、並みの刀鍛冶が作ったものではないことがうかがい知れる。
 ティラルにはこの様な剣は初めて見るものであった。

「…これは少し前に、ルビスの新世界に迷い込んでしまった刀鍛冶がくれた剣だよ。いや、剣ではなくて刀って呼ぶと教えてくれたけどね。かつてヤマタ ノオロチが支配していた地域があってさ。そのヤマタノオロチが退治された後の、オロチの尾から見つけられたんだって。その地域では天叢雲剣(あめのむ らくものつるぎ)と呼ぶらしいんだ」

 細く長い刀身を竜の女王が軽く振るだけで、ビュンと音を立てて風を切る。ティラルには、その風が本当に切れていたようにも見えた。それほどの剣を なぜ譲り受けたのか、ティラルは気になった。

「・・・その刀鍛冶は、勇者の父親には、それに相応しい王者の剣を鍛えたらしいけど、これは渡せなかったんだって。理由はその勇者の父には似合わな い剣だったから。なんだそうだけど、今ここにある理由は、あたしの存在を知ったから、だそうだよ」

「竜の女王を知った?普通の人間が知るはずのない、竜の存在を?」

 元々、天上界に住む竜族の存在は、人々には知られていない。この世界が実は、密かに竜の加護を受けて存在していたことも知られていない。そのこと はティラルも知っていた。
 ルビスの作った新世界に渡った勇者たちは、ラーミアに連れられてここに来て初めて竜の女王の存在を知り、新世界に居る大魔王を打ち砕くための手段と して、竜族に伝わる「光の玉」を受け取った。自分でそのことを反芻したティラルは、そこでまさかと言う顔をする。

「おしゃべりな勇者だったみたい。刀鍛冶はその勇者にこの刀を託そうとしたらしいんだけど、断られたんだって。その時にあたしの存在を話したそう で…ヤマタノオロチも竜族の端くれだし、そういう意味で竜族が居るのであれば、そちらに渡すのが正しいって、勇者は言ったそうだ」

「アメノムラクモノツルギ・・・難しい名ですね」

 竜の女王の言葉に、ティラルは納得したような表情を浮かべて頷いた。そして、その刀と呼ばれる剣についた名を復唱してみる。

「刀鍛冶の話では、昔話に出てきた剣の名前らしいよ。そもそも、ヤマタノオロチも伝説上の生物、正確に言ってしまえば、その昔話になぞって大魔王が 勝手に作った魔物がヤマタノオロチなんだけどね。昔話で、ヤマタノオロチから出てきた剣が、天叢雲剣って言うんだってさ」

「竜の女王はその昔話のことは知っているんですか?」

 刀身に魅入られて、ティラルはその剣をじっと見つめたまま、半分は夢遊病者の様な少しろれつの回らない言葉で質問を返す。

「細かくは知らない。ナントカのミコトってのが、その地域を作り出した。そのミコトが退治した悪い妖怪の一つにヤマタノオロチがいる。そのくらいだ よ。刀鍛冶の話を付け加えれば、その退治したヤマタノオロチから見つかった剣と言うのが、このアメノムラクモノツルギなんだそうだよ」

 特別なことは何も知らないと言った様に竜の女王は主要な部分だけを拾い上げて、ティラルに話した。何か特別な話なんだろうとティラルは理解した が、それ以上は特に突っ込むようなことはしなかった。そして、その話をしたあと、竜の女王は再びその刀を一振りする。
 そのときになって初めて、ティラルは剣に魅入っていて微動だにしていなかったことに気がついた。

「刀身が細いから、パワーファイター向けではないと思うけど…特殊な剣ならば、そう簡単に折れることもないと思うんだけどね」

 そう言って背中に装備した、刀身と同じように細めの鞘に剣を納めた。

「先ほどから、ずいぶんと砕けた話し方をしていますね?りゅ・・・」

 ティラルが言葉を続けようとしたとき、竜の女王は突然ティラルの口を塞いだ。

「堅苦しいのもなしにする。あたしは生まれ変わったんだし…女王と呼ぶには若すぎるんだろ?」

 ティラルが初めに言ったことを根に持っていると言いたそうな笑みを浮かべて、竜の女王はティラルに言った。

「…あのことは謝りますよ。…けどまぁ、別時空の行った先ではもう、女王ではなくて一人の人間なんですよね」

「そう。だから、別に堂々としなくったっていいってこと」

「ならば、呼び方も変える必要がありますね?」

 二人は再び、竜の女王の居城の中を歩き出しながら話を続けた。

「そうだね。だけど…あたしはどんなのが良いかわからないんだよね」

 二人は話しながら暫く歩くと、旅の扉とは少し違い、七色ではなく黒紫と言ったあまり好ましくないような色の渦が巻いている場所に辿り着く。

「ここ、かな?」

 竜の女王がその渦を指差してティラルに尋ねる。ティラルもいまいち判断不足と言った感じの表情をしたまま一回頷いた。

「んじゃ、飛び込んでみるか。ね、ティラル」

 竜の女王はそれまで堅苦しくしゃべっていたのを完全に止め、ティラルに対しても同等に扱うような言葉でそういう。

「…そうしゃべるところが、クーファヴィーグルのあたしの親友に似てるんだよな。よし、その親友の名”レシフェ”をあなたにあげる。…これからよろ しくね、レシフェ」

「レシフェか。良い悪いはわからないが、あたしに似た親友なのならば、あたしもこの先、ティラルとは良い親友付き合いができそうだね、こっちこそよ ろしく、ティラル」

 二人はお互いに名前を読んで、改まっての挨拶をする。
 そして、お互いに照れのような笑みを浮かべて一回頷く。
 勢いをつけて、二人はその黒い渦に向かって飛び込んだ。

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