事件/緋村剣心、斎藤一


 弥彦や薫との一件が過ぎて数日。

 突然剣心に警察からお呼びがかかり、神谷道場の前に馬車が来ていた。何事かと剣心以下神谷道場の全員がざわついたが「藤田五郎」から「緋村剣心」の呼び出しと聞き、剣心はどういう風の吹きまわしかと驚いたもののその呼び出しに応じる。

「おい剣心、俺も行くぜ」

「…済まぬでござるが、左之、相手がいくら斎藤だからと言って、護身に左之に来てもらうのは少々警戒しすぎな部分もあるでござる。…それより『なにかある』。無礼ついでで申し訳が無いでござるが『神谷道場の方を頼む』」

 剣心が慎重に言葉を選びながら左之助に伝える。その言葉の端々にあったキーワードを左之助は確認すると、ニッと笑うと「おう、任されたぜ」と言って、同行をあえてせず、神谷道場の護衛の方につくと言ったことに終始することを了承した。


 神谷道場から、斎藤のいる警察署まで馬車で数十分。

「馬車から降りてくるお前がさしずめどこかのお大尽のように見えるのも不気味だな」

「…好きでやっていることではないでござるよ、それに馬車を寄越したのはそちらでござろう」

 警察 署の窓から顔を出して剣心に声をかけたのは、剣心を呼び出した斎藤一だった。皮肉と受け取り、剣心もそれに便乗するかのような言葉で返す。廃刀令に反して 腰に刀を帯刀し、袴姿で歩いてくる剣心を、その入り口で斎藤が迎えると言った意外な形で剣心は警察署の中に入っていく。

「…して、わざわざ拙者を呼び出し・・・」

「…鵜堂刃衛には多少苦戦したようだが、『緋村抜刀斎』に立ち戻ったそうだな、どうだ久しぶりに血肉を求めた『人斬り』に戻った気分は?」

 剣心が斎藤に声をかけるがそれをかき消すようにして、斎藤は鵜堂刃衛との一件について剣心に訊ねてくる。

「…拙 者は血肉を求めているわけでも無くば、好きで人を斬っていたわけでもござらん。お主が『悪・即・斬』の誓いの元で戦っていたのと同様、拙者の『血で汚れた 剣の先』に誰もが安心して過ごせる未来があればと人斬りをしていたまで。刃衛の時は薫殿を巻き込んだ自分に怒っていただけでござる」

 剣心が言うが、たばこを口にしながら斎藤は次の言葉を楽しそうに選んでいるのが、声を出す前から剣心は感じ取ることが出来た。

「とは言え、お前の弱点を突かれても抜刀斎であったままと言うのは、それなりの怒りで抜刀斎の血が騒ぐ証拠じゃないか?」

 斎藤は何となく笑みを浮かべ、剣心をからかうような態度で剣心に話しかけていた。

「…確 かに、抜刀斎に立ち戻り、刃衛を殺そうとしたことは認めるでござる。が、だからと言って、この先も自在に剣心と抜刀斎を切り分けることはしないでござる し、そんなことが出来ていればこの傷などもつかずに済んだでござろう。拙者はそんなに器用な人間ではないでござるよ」

 言いながら、左頬に深く刻まれた十字傷を触りつつ、斎藤に返事をする。何となくつまらなくなってきたのか、斎藤はその辺りで剣心をいじるのをやめ、少しの沈黙を置く。

「して、何用で拙者をわざわざ警察署へ?神谷道場を巻き込みたくない拙者の気持ちを汲んでもらったと勝手に解釈し、左之には道場を頼むと同行はさせないで来たが・・・」

「ああ、そこまで考えてくれるとは思っていた、こちらの気持ちがわかってくれて在り難い」

 そう言いながら斎藤は剣心をある一室に招き入れる。

「抜刀斎、最近『天誅』の紙を置いて逃げる辻斬りの話を聞いたことはあるか?」

 斎藤は何一つ隠す様子もなく、突然確信をついて剣心に質問する。「天」が天皇を意味し、「誅」が人を咎め殺めることとされているが、それを記した紙が死体のそばに置かれた死体と言うのがここ最近、辻斬り凶行とともに存在していると言うのだ。

「…天誅・・・その前に辻斬り凶行自体、拙者は預かり知らぬことではあるが…」

「フン、正義の血が騒ぎ始めたか?そのうちそれは抜刀斎のそれに代わることを期待しているがな、お前が正気を保つ限りは腑抜けた『剣心』の方が強く表れるのだろうがな」

 鼻で笑っているがその実、本当に『使える』状態にあるのか、半信半疑の斎藤に対し、剣心も少し心もとない気分を感じていた。

 何より、剣心自体いつまた『緋村抜刀斎』に立ち戻ってしまうかが正直怖くもあった。何が抜刀斎を『押さえ切らないのか?』、剣心は自問自答していたが、いつになってもその答えは出ないでいた。

「その辻斬り凶行を止める、と言いたいのでござるのか?」

「…す ぐに出る必要はあまりないが、そのうちに要職についている維新志士の中でも、単に肥えた者から確実に殺される。…何かの目的があるのだろうが、連続性に関 しては全くわからん。何せ、幕府方の特に要人でもない人間までも殺されているのだからな。俺も貴様もいずれは標的にされる。それが確実だとは思わんか?」

 斎藤の言葉は特別早急な解決を願わなくてもいい、と言う感じだったが「いずれ自分たちがその辻斬りに狙われる」と言う言葉は、そう甘く看過すると言う訳にもいかないと言うのは剣心にも感じられる言葉を含んでいた。

「…先に拙者たちにその辻斬りを向けようと言うでござるか?」

「そうなったとき、貴様は使えるのか?と言うことを訊きたかったんだよ。確実に刃衛とは違う性質の辻斬りだ。だが…心配なんだろう?抜刀斎に立ち戻ることが。俺としては、人斬りに戻ってくれた方が何倍も楽に仕事ができるんだがな」

 斎藤 のその言葉は剣心の確信をつくものだった。女であることがばれても抜刀斎にはおそらく戻らない。が、神谷道場になにかあれば、もしくは自分がぎりぎりの攻 防を必要とされれば…斎藤の言うように確実に人斬りの自分に立ち戻り、容赦なく『斬って』『成敗する』ことになるだろう。それは斎藤だけでなく、剣心にも 容易に想像できた。

「斎藤、猶予としてはどのくらいあるでござるか?」

「別に 急がなくたって、肥えた、金に飢えた、元の志士たちが順に殺されるだけだ、その間中、考えることは簡単だろうよ、それにどうやってその辻斬りを俺や抜刀斎 に標的として認識させるかも決まっていない。こちらの準備もある。その間いくらだって考えていられる…が、人斬りと剣心とやらの間を揺らぐ自分に対して、 考えるだけで覚悟が決まるのかどうか、と言うところだな」

 いち いち、と言うのが正しい表現かどうかはわからない。だが、斎藤の言う言葉は、剣心が考えていることの図星をつくことばかりだった。考えるだけで、人斬り抜 刀斎に戻らなくなるはずはない。どうすることが抜刀斎に立ち戻らないで居られることなのか、今の剣心にはわからなかった。



遭遇/????、緋村剣心 決心/神谷薫、緋村剣心

 斎藤と話をした帰り道、陽は幾分傾きつつあったがまだ暮れる前の時間。剣心はどうすれば抜刀斎を押さえ込んで剣心のままで飛天御剣流を振るうことが出来るかを考えていた。そうしながら歩いていると、正面に黒い笠、黒い着物の謎の男が立ちはだかる。それは・・・

「お・・・お主!?いや、刃衛は自らで命を絶ったはず」

「安心しろよ、俺は鵜堂刃衛のような中途半端なはぐれ人斬りじゃねぇ。俺が気に入らない人間を片っ端から成敗してくれているヤツさ、そう、天誅と言う名のもとにな、緋村抜刀斎」

 姿かたちはどう見ても、鵜堂刃衛のその姿だった。だが、声を発したその黒装束の男は刃衛ではない声で、だが、刃衛を上回る剣気と覇気を備えていた。

「…貴様が最近の辻斬り凶行をしているものでござるか」

「…ああ、そうだ緋村剣心。だが、俺は緋村剣心には用事はねぇ、抜刀斎に用事があるだけさ」

 その言葉を聞き、こうも早い段階で斎藤の言っていた辻斬りの犯人に出くわすことになるとは剣心も思ってはいなかった。黒装束の男が手にした抜き身の刀には、血のりが色濃く付きどす黒くまた、そう簡単には取れそうもないほどの色をしていた。

「…今日はその顔を拝みに来ただけさ、安心しな。…緋色の髪、左頬の十字傷。伝説の抜刀斎がどんな奴かと言うのをな。まだまだ斬らにゃならんブタどもがたくさんいるんでな、楽しみはあとに・・・」

 黒装束が言うが、剣心はここでなんとか食い止めようとスッと逆刃刀を抜く。

「おいおい急ぐなよ。いずれお前のところや斎藤一のところにも行ってやるからよぉ」

「…これ以上、犠牲は出せぬでござる。いま、ここで貴様を止めればこれ以上の・・・」

 剣心が言うと、黒装束の男はスッと静かに地面を蹴って剣心に斬りかかる。

 しば らくお互い刀を組み、かわし、往なしながら斬り続けていたが明らかに違う部分が出ていた。それは、男の方は確実に人体急所を突きに斬りに来ていて、その 狙ってきている刀は抜き身で確実に斬れる刀であること。一方の剣心の刀は逆刃刀で、突きさえも防ぐよう、先端まで峰と同じく厚くなっていて、同じく急所を 狙っていても相手にダメージとしての傷を与えることが出来ないでいる差が生まれていた。

「ほう・・・。その逆刃刀でなかなかいい剣捌きをするな。だが、見てわかるだろう?お前が抜刀斎として刀を返さねぇと、俺の急所にも、ほかの部分にも傷は作れねぇ。鵜堂刃衛は次々に人を斬り、人質を使って貴様を抜刀斎に立ち戻らせた」

 黒装束の男がそこまで言うと、剣心はハッとなってその先にある神谷道場に駆けだそうとする。

「おっと、安心しろよ。神谷薫を初めとした連中には手を出さねぇ、これだけは約束してやるよ。俺は鵜堂刃衛みたいな姑息な手は使わねぇで、お前を抜刀斎の高みまで立ち戻らせてやるからよ。…また今度、ゆっくりと刀を交えようぜ、緋村抜刀斎さんよ」

 男はそれだけ言うと剣心の前から姿を消す。敵の言うことが信じられる可能性はそう高くはない。剣心は急ぎ神谷道場に戻る。そして中庭に出ると、いつも通り修行のつもりで竹刀を振っている弥彦とそれを肘をつき見ている左之助の姿があった。

「お、剣心…どうしたんだ?そんなに汗だくになって」

「左之、何事もないでござるか!?

 剣心は焦りつつ、左之助に訊ねる。左之助の方は何があったのかと不思議なくらいに落ち着いていた。そして、左之助の返事を待たずして、奥からは薫が姿を現す。

「剣心!!突然姿を消したからどうしちゃったのかと心配したのよ!?左之助はすぐ戻るとしか言わないし。でも、何事もなかったみたいでよかった」

 日常の姿を目の当たりにした剣心はホッと胸をなでおろすと、そのままヘナヘナと腰から力が抜けてその場にぺたんと座り込んでしまった。

「おいおい剣心。本当に何があったんだよ、突然腰抜けになるなんて」

 左之助が半分茶化すようにして、剣心に言う。黒装束の男の言った言葉は信用できる言葉だった。


 その夜。

 皆が 寝静まったとき、剣心は逆刃刀を手に、素振りやそこから発展する影技の型を取り続けていた。それは抜刀斎に立ち戻らないようにするための用意でもあった が、仮に昼間会った黒づくめの男と剣を交えた場合、圧倒的に不利になるのは剣心自身だと言うことは自分が一番わかっていた。どうあがいても多分人斬りに立 ち戻る。そこから逃れられないと思われた。

 同時 に黒づくめの男はすでに何人もの犠牲を出し、その中では元新選組の隊士も何人も含まれていると言う斎藤の言葉もあって、その実力が『人斬り抜刀斎』が当時 幕府方の人間を暗殺していたその力と同じくらいにはその兇刃が鋭くも確実に死へと導いていたことは、昼間に刀を交わした時点で確認できることだった。

 カタッ

 剣心が静かにだが鋭く逆刃刀をふり、流れるように次々に飛天御剣流の刀技と影技と自ら呼んでいた刀に頼らない技の型を繰り出していたその時に、わずかに何かの音がして、剣心はスッと逆刃刀を納刀するとその音の方を向く。

「…薫殿。起こしてしまったでござるか?」

 そこには寝間着姿の薫の姿があった。

「ううん、ちょっと寝られなくてね。道場の方から音がしたんで来てみたら剣心が刀を振るっていたから見ていたの。…飛天御剣流、刀の流れは綺麗なものなのね」

 薫はそう言って剣心の方に近付く。

「昼間は左之助に道場の見張りを任せて…斎藤一のところに行っていたんでしょう?」

「…さすがに薫殿には隠せぬでござるな」

「…抜刀斎に立ち戻る、そのことが気になっている。そしてそれは何者かがまた、剣心に近づいている…違う?」

 薫はそう言って剣心に軽く笑みを浮かべながら問い詰める。剣心は軽く笑い、少しうつむく。

「私が緋村抜刀斎だと言うこと、抜刀斎に立ち戻ると確実に死を相手に導きいれること・・・驚きましたよね?薫さん…」

「驚きはしたわ。でも…私が知っているのは流浪人(るろうに)の緋村剣心だけだから…」

 剣心は本来の性の口調で話を始める。

「でも、私の本質は人斬り抜刀斎なんです。偽ることのできない、心の底に住み着く影の部分…」

 剣心は胸に手を当てて、静かに目をつむり、薫に静かに告げる。

「そう…ね。私たち神谷道場の人間が…左之助はあんなだから心配はないでしょうけど、私や弥彦はまだまだ守ってもらう立場、それを考えると、剣心自体は人質に私たちがなってしまうと、どうしても抜刀斎として剣を振るうことになる」

 薫の方もわかっていると言わんばかりに剣心に、剣心が一番心配していることをわかっていると承知の上で話をする。

「そ う…ですね。弥彦であればまだ、なんとかなります。薫さんを手練れとして弥彦を人質に取るしかできないような剣客であれば、きっと弥彦のこと、先日の一件 があっても多分、自分から相手を倒すくらいの心意気はあるでしょうから。でも…薫さんは私にとっては単に同性の友人と言うようなそんな簡単に片付けられる 関係ではないと思っています。それが一層のこと、薫さんに何かあれば抜刀斎が姿を現す・・・」

 剣心 はそう言っているうちに、自然と涙が出てきていることに、剣心自身は気付かなかった。だが頬を伝う涙を見た薫は、剣心が薫に対してどんな感情を抱いている か、剣心が姉であり薫が妹である、そんな感情で居られるほどではないと言うことが薫にも分かった。それを見たとき、剣心が何かを考えていることがある、そ れが簡単に分かってしまった。

「剣心は筋の通った格好のいいお姉さん…だけど、その一本入っている筋は剣心自身、感情や内に秘めていることを容易に回りが感づくことを許してしまう」

 薫は少し笑いながら、剣心にそう言う。剣心はその言葉に何も言えないと言うように苦笑いをしながら、涙を流す。

「薫さん…私はこのままで神谷道場にいることはできないです…」

「剣心・・・」

「どんなに緋村剣心だと言っても、奥底には人斬り抜刀斎と言う化け物を宿している、それに違いはありません」

 剣心は涙を見せながら、正面で薫を見据えて正直に話をする。薫はその言葉を聞き、なんて返したらよいかわからないでいた。

「今日、斎藤さんのところに行ったのは、私や斎藤さんに兇刃が向いていること、同時に政府や維新の功労者たちにも兇刃が迫り、すでに数十の屍が生まれている。それをどうにかするために斎藤さんは緋村抜刀斎を呼び出したんです」

 剣心は今日、斎藤と話した簡単な流れを説明する。

「・・・ そして、その兇刃を振るう男と帰り道で会ってしまいました。その男が言うには何かの順番があるようで、まだ、斎藤一も人斬り抜刀斎もその順番ではないそう だと言いましたが、今のうちに叩き伏せることが出来ればと思い、刀を交えましたが…圧倒的に不利であり、また私の飛天御剣流では、その男に対して、剣心の ままで仕留めるどころか、逆にその男は私には確実に傷を作りつつ、私はその相手に傷一つとして作ることが出来ないでいました」

「そこでなにかが…人斬り抜刀斎が…姿を見せた」

 剣心は事の顛末を話ながら、まだ涙は流していた。そして、今日の黒づくめの男と仕合った様子を簡単に話しただけで、薫にはそこに『人斬り抜刀斎』が姿を見せたことを容易に感づかせることになる。

「ええ、その通りです。ですが今日はそれをみて納得したのか相手は続きを保留にして姿を消しました。…私は…まだ、飛天御剣流を完全に使いこなせないでいます」

「剣心…飛天御剣流を完全なものにするつもりなのね」

 そこまで薫が言うと、弥彦と左之助に宛てた手紙を薫に手渡す。涙が数滴落ち、表面に書いた達筆の弥彦と左之助の名がじわりとにじむ。

「一つだけ、約束してほしいの」

「神谷道場に必ず戻ってくること。ですね、大丈夫です。どのくらい先になるかの約束はできませんが、必ずこの道場に戻ります」


 翌日の朝。

 緋村剣心の姿は、神谷活心流道場には無くなっていた。


 薫は『流れたのではない』と言い、怒り心頭の左之助と弥彦に、剣心の涙で一部にじんだ手紙を差し出す。それを読み、左之助は舌打ちしながらも納得できたと言いたそうに縁側にどすっと音を立てて座り込む。だが、弥彦はすぐにでも剣心を連れ戻そうと動く時だった。

「オイ 弥彦。…おめーは剣心がどこにいるかわかってんのか?それと、剣心はあくまで『修行に出る』とだけ書いてある。流れたわけじゃねぇ、嬢ちゃんも納得してい るようにいずれはこの神谷道場に戻る。その時を待つのが今の俺たちの仕事だ。それと、俺はこの道場と嬢ちゃん、おめーを守ってくれとあった。おめーの手紙 にも、少なくとも嬢ちゃんを頼むくらいのことは書いてあったんじゃねぇのか?…男が男の約束を守れねぇで何の剣客だ?おっと、剣心は女だと上げ足取るな よ、剣心は晒姿を見せても、剣心であり続ける限りあいつは男でいるつもりだ。俺は剣心を男と信じ、男の約束を果たす。…おめーも少し冷静になれ」

 左之助も少しは納得していないようで、自分に言い聞かせながら弥彦に言う。それを聞き弥彦もまた、納得していないがそこにある頼まれごとをしっかり果たそうと、懐に手紙をしまい込む。そしてまた、薫とのけいこの許されない弥彦は自分に課した修行に戻った。