傾倒/明神弥彦 正道/神谷薫、緋村剣心

 剣心の正体のことを神谷道場のみんなに話してから数日が経つ。

 師範 代の薫は門下生の弥彦を見ているが、弥彦の方は神谷活心流よりは飛天御剣流の方に興味を持ったままだった。それには剣心もあまり良い感触を得ているわけで もなく、少々困ったと言うような態度をとるに至っていた。薫もまた、活心流の何たるかを弥彦に説こうと、理について話そうとしていたがなかなか弥彦はそれ に応じない。


 そんなある日。

 左之助はいつものように街の中に姿を消し、剣心と薫、修行にあまり熱のこもらない弥彦の姿がある。剣心は剣心で御剣流の件で、薫は御剣流に傾倒していく弥彦のことを、それぞれ案じて居た。だが、見かねていた剣心は、弥彦と薫を道場内に呼ぶ。

「弥 彦、どうしても御剣流に傾倒すると言うならば、二度と拙者も御剣流は使わぬでござるよ。必要以上に御剣流の強さを見てしまっている故、弥彦は御剣流を会得 したいと思うようでござるが…前にも言った通り、剣は凶器、剣術は殺人術、どんなお題目やきれいごとを並べてもそれが真実でござる。これからの明治の世に そんな殺人剣は必要ないでござる。それを拙者自身が証明すれば、弥彦も諦めがつくのではござらんか?」

 剣心は突然、自らの飛天御剣流をも封印すると言い出した。それを聞いた弥彦は何を剣心が言っているのかわからなくなったと言うような表情でその瞳は剣心と薫を行ったり来たりしていた。

「…そうね、剣心がもし、神谷活心流を会得してもらえば不殺(ころさず)の誓いも簡単になすことが出来るわね」

 剣心も薫も納得していると言いたそうな口調で、剣心が飛天御剣流ではなく、神谷活心流を会得すると言うのである。それを聞いてどういうことか弥彦はさらに混乱する。

「じ、冗談だろう?剣心が飛天御剣流を振るわないとすれば俺はこれ以上技を見られなくなるってことじゃねぇか」

「その ほうが良いと言っているでござるよ。それに拙者が活心流を振るうとしても、簡単に弥彦を追い抜くことはできるでござる。…仮に今まで通り御剣流を会得した いと言うのなら、技を見せることはできないでござる。…きついことを言えば、自業自得。…なんで弥彦は活心流道場で修行をしているか、今一度考えてるでご ざる」

 剣心が言う言葉に薫も納得したように頷いて見せた。

「それとも…仮に剣心の振るう飛天御剣流に負けずとも劣らない活心流を見せれば納得するのかしら?」

 今度は薫からとんでもない発案が提示される。それを聞いた弥彦自身、どこかで活心流が御剣流に劣っている部分があると感じているところはあった。が、飛天御剣流に神谷活心流が抵抗できるとは思っていなかった。

「ある門下生が、人斬り抜刀斎騒動の時に『棒切れを振るって勝てるはずがない』と言った事があったけど…そんなことはないのよ。それに、神谷活心流にも奥義と秘技は存在しているのよ?」

 薫が言葉を付け足すように弥彦に言う。そこまで話が進むと、剣心はそれまで手に持っていた逆刃刀を帯刀する。一方の薫も木刀を手に剣心の方に鋭い剣気と眼力で対抗しようとしてみせる。

「ちょ、ちょっと待てよ薫!!いくら逆刃刀相手とはいえ、活心流で・・・」

「黙りなさい、弥彦。実際に仕合えばその力量もわかってくるはずでしょう?しっかりと見ておきなさい」

 薫は弥彦の言葉を珍しく厳しい口調でいったん止める。そして右手で持った木刀の先を剣心に向ける。

「人斬り抜刀斎まではいかなくとも、緋村剣心の飛天御剣流をたたき伏せることは簡単なのよ?」

 薫が言うと、剣心は逆刃刀を抜刀して、右手に握り、少し刀を引いた状態に持って行く。そこから大体の場合は剣心の神速が発揮されるのだが、図らずとも先に動き出したのは薫の方だった。

 薫の 活心流の動きは、剣心の飛天御剣流と違い、静の動きと言えた。一方の剣心はその神速故、動の動きで薫に向かっていく。ガッとした音がすると、剣心と薫は鍔 迫り合いの状態で力比べをするようになっていたが、それを意図して手前に引く薫は、前のめりになって体制を崩す剣心に容赦なくその背中に木刀での(龍巻閃にも似た)一撃を喰らわせる。だが剣心も負けじとその背中に入れられた一撃から体制を立て直すとすぐに薫の正面まで素早い動きで移動すると、こちらも容赦のない龍巻閃(りゅうかんせん)を お見舞いする。「くっ」と言う薫のうめき声が聞こえたが、逆刃刀の一撃を喰らっても薫は体制を崩すことなく耐え、背中合わせの二人はすぐに振り返ると剣心 はその場で床を蹴り龍槌閃の態勢に入る。それを確認した薫は一歩、剣心の神速の龍槌閃も見切り空振りさせると、その右肩に鋭い突きを繰り出す。

 そこ からは剣心も薫も一歩も引かない木刀と逆刃刀のやりあいだったが、いくら女の剣心でも、その飛天御剣流が神谷活心流の技で前に一歩出ることが出来ない状態 を目の前で弥彦は目撃することになる。そして、大きく剣心が逆刃刀を振り上げ振り下ろした時、薫は白刃取りを手をクロスして、受け止める。そこからは剣心 の刀身を流れるようにして、柄の方に流れる。その流れは最終的に木刀の柄で剣心の喉笛を叩きに行く。剣心は慌てて逆刃刀を引いたが薫の技は半分程度でも確 実に入っていて、剣心は一瞬息が出来なくなり、ガクッと片膝が崩れる。そこから剣心は逆刃刀で一閃させ薫が近付くのを止める。すぐに立ち上がった剣心だっ たが、フッと薫が姿を消すような仕草に変わると剣心の鳩尾に木刀の先が確実に入っていた。

 剣心 はその木刀を引き抜こうとするが、薫はその様子を見ると木刀をわざと下にずらし、そこから飛天御剣流で言うところの龍翔閃のような形で剣心の顎に木刀を振 り上げる。すべてが静の大きくはないモーションながら薫が確実に剣心に攻撃を仕掛ける。剣心の方は飛天御剣流の技そのものを出せば、そこにわずかなスキが 生まれてそこに薫の小技ながら確実に「九つ」あると言う弱点を突いてくるのが分かった。わかったものの、顎を強く木刀で殴打された剣心はのけぞるような体 制になる。薫は素早く立ち上がると、のけぞった剣心の顔に木刀を叩きつける…寸前で止める。結果、剣心はそのまま床に背中から倒れこむ。

「ま、参ったでござる」

 剣心 は息切れこそしていなかったものの、確実に入った鳩尾を抑えながら立ち上がる。薫は間一髪ながら剣心とほぼ同等に渡り合い、肩で息をするようにしていた が、どちらに分があったかは一目瞭然だった。そして、誰よりも神谷活心流の使い手、神谷薫に驚いていたのは弥彦だった。だが、驚きと同時に剣心がわざと負 けるようなことをしたとも勘繰り始める。

「…拙 者は別に手を抜いたりしてはおらんよ、その証拠に龍巻閃もしっかりと出して見せたでござろう、それ以外の技も。確かに薫殿も拙者の技を何度か見ているか ら、どう対処したらよいかわかっているかも知れぬでござるが…だからと言ってそう簡単に飛天御剣流を本気で使った剣客に勝てるというものでもござらんよ」

 剣心は腹の少し上、鳩尾に手を当てながら立ち上がる。

「薫殿、お見事でござった。正直、龍巻閃で終えられるとは思っていたでござるが、まさか龍槌閃まで駆使してなお、倒れないのは…」

「多分、人を活かすための剣だから。殺さず確実に相手にダメージを蓄積させるためには私は倒れるわけにはいかないわ」

 剣心が途中まで言うと、薫が『活心流の理』のようなことを口にする。それを聞いた弥彦はなんだか馬鹿にしていた活心流がどれだけすごい流派なのかが分かった気がした。

「それでも、活心流の奥義を出さなくちゃ対応できなかったんだけどね。弥彦、神谷活心流『刃渡り』と言う技を一応披露したわ。…剣心、もう一度上から斬りかかって」

 薫が言うと剣心はすぅと逆刃刀を軽く薫の頭の上に持って行く。そこで手をクロスさせて柄を剣心の喉仏に向けて手を滑らせて剣心の喉笛まで行くと自然、柄で喉笛を攻撃することになる。

「この一連の技が神谷活心流奥義『刃渡り』よ。見てわかると思うけど、真剣相手にこの刃渡りを出せば自分も多少は腕に傷を負いかねない。どれだけ傷を大きくしないで瞬間、刃渡りに移行してその握っている柄を喉笛、鳩尾、両肩などに的確に当てるか。それが大事な技よ」

 薫は そう言って奥義の型を弥彦に説明する。剣心との仕合の中で薫が見せた刃渡りは確実に剣心の喉を攻撃して、たとえ瞬間でも息が止まると言う状況で剣心の不利 を導き出した、と言う事実がわかる。そういうものだと言うことを弥彦は目の前で確認していたがまだ半信半疑でいた。

「剣心、本気じゃなかっただろう?」

「…ふぅ、まだ疑いますか。私が薫さんに龍巻閃だけでなく龍槌閃も出しているんですよ?大抵逃げられない技です、どちらの技も。…私が手を抜いていたと思うならば、薫さんに実践で証明してもらう方が早いのかも知れませんね」

 剣心が言うと、わざわざ剣心は木刀の一本を弥彦に投げ渡す。

「弥彦は見様見真似で飛天御剣流の技を出せるかもしれないと思っている節があるようですが、実際の『仕合』や斬り合いについてはそんな余裕はありません。ここまで見て納得がいかないと言うのであれば、師範代からその体に十二分に分からせてもらうといいと思いますよ」

 そう言って、剣心は女口調で弥彦に対してきつい言葉を発する。そして弥彦を薫の正面に連れてくる。お互いが木刀を構えたとき、薫はすでに剣気、眼力で弥彦を威嚇する。それが薫がいつもどれだけ本気を出さずに稽古で仕合っていたかがよく分かった。

「始めっ!」

 剣心が言うと、先ほどと同様に薫はスッと床を軽くけり弥彦の方に来ると、唐竹(剣道で言うところの面)や 袈裟斬り、逆袈裟など次々に放ち、剣筋を確認できるものの弥彦は防戦一方だった。耐える中で時々、薫に隙ができるのを弥彦は感じ、防御から薫に対して攻撃 に転じるがそこで突然薫の本気の剣気が弥彦にびりびりと伝わり、あと少しのところで弥彦の攻撃はかわされる。どころか、弥彦の攻撃をよけて見せた薫は弥彦 の木刀を本気でたたき、二つに折って見せる。しかもそのまま弥彦には斬り返した木刀で腹部に強烈な一撃を喰らわせた。

「そこまで」

 剣心はあえて弥彦の心配などせずに淡々と仕合を止めるだけの立場をとる。

 弥彦 はその場にうずくまると、咳込んで立ち直るまでしばらくは時間がかかる。その間も薫はずっと弥彦に今までの剣気を浴びせ続ける。弥彦は腹部の痛みが引いて も立ち上がることが出来ないでいた。攻撃はもうされない、それはわかっていたがそれでも薫の剣気はまだまだ弥彦には押し返せるものではなかった。しばらく うずくまったままで、薫の剣気に震えだした辺りで、ようやく薫はその剣気を解き剣心の方によって行く。

「どうでござるか?これが活心流の剣気でござる。…薫殿は剣気こそ負けたもののそれでもあの刃衛の剣気も目の前で見ていて、腰を抜かしたりすることはなかったでござるよ。それは薫殿の剣気もまた、その場に居留まることが出来ただけの剣気があったと言うことでござる」

「…これでもまだ疑うならば出ていきなさい。そんな門下生なんて私の方からお断りだわ。剣心…あと、お願いね」

 剣心の言葉の後、木刀を正規の位置に置き薫は剣心に一言言って道場から出て行ってしまった。相変わらず弥彦はうずくまったままで起き上がれない。そのうちにすすり泣くような声が聞こえ始めるがそれでも剣心も手を差し伸べることはなかった。

「・・・とうとう嬢ちゃんの逆鱗に触れたな、弥彦」

 ちょうど帰ってきた左之助だったが、道場の中ほどでうずくまり、上座には笑顔のかけらもない剣心の姿を確認するとそれだけで左之助はその状況が分かったようで、弥彦に声をかけた。

「圧倒的な負け試合だったろう?その何倍もの剣気とおれは喧嘩したがあっさりと負けた。女剣客のあいつにな。女だからとか木刀だからとか、そんなの理由にはならねぇし、仮に真剣だったら殺されたんだぜ、しかもあの嬢ちゃんに、だ」

 左之助はそう言いながら剣心の近くまできて、立ったままで弥彦の様子を伺った。

「左之、拙者が薫殿の数倍は買い被りでござる。拙者から見ても薫殿の剣気は同じ女としては強いものでござる。…仮に薫殿が幕末の乱世の中に身を投じ真剣を持ちでも、活人剣で戦うとしても、生き残るのは十分でござろう、おそらく」

 そう言って剣心は弥彦の方を見る。

「先ほどの薫殿の剣気。…拙者と先程、本気で渡り合ったのはあんな軽い剣気ではないでござるよ?正直なところをいえば・・・」

 とど め、とばかりに剣心は薫がどれだけの剣術者であるかを告げた。それを聞き、泣いていたのも忘れたようにがばっと起き上がると、信じられないような表情で剣 心と左之助の方を見る。薫がまだまだ手加減どころか剣気さえ本気で出していなかった。それを聞き自分がどれだけ小者なのかを、弥彦にとっての最終通告を剣 心からもらうことになった。

「本当 の闘いの場ってーのは、そう簡単な場所じゃねぇ。剣術のイロハのイくらいなんだぜ、おめーが嬢ちゃんから習った活心流はよ。そして、嬢ちゃんが『師範代』 でいることの理由だってそこに隠れてる。…修行が足りない、いっぱしの剣客にはなれないから、師範に代われてもまだ師範としての自分がまだ遠いと自分で 言っているんだ。…弥彦が門下生だと言うことで稽古をつけている中で嬢ちゃんは自分の修行にも励んでいる、その事実を知るこったな」

 左之助も今回ばかりは慰めの言葉などかけてくれない。弥彦は自分の中で何かが崩れるような感覚を覚える。剣心も左之助も真面目な顔して弥彦を見ていた。

「ま ず、活心流で御剣流を抑え込む。それは可能でござる。ただし、拙者が抜刀斎に立ち戻っていた時は話は別でござるが…。次にその活心流は刀が必要かと言う と、実際は木刀や竹刀でも十分に渡り合えるでござる。最後に、薫殿の知る活心流の奥義はまだまだ隠されているし、通常の活心流の技さえ習えていない弥彦の 実力がどこにあるか、よく考えなおすでござる」

 剣心はそう言うと立ち上がろうとするが、敢えて左之助がそれを止める。

「…喧嘩屋と遊んでみるか?弥彦」

「…これ以上みじめな思いはしたくねぇ。どうすれば師範代は許してくれる?いや、まず剣心や左之助は今の俺が考え直すことを許してくれる?」

「簡単 なことじゃねぇか、俺たちはいつだって手は貸せる。修行の合間でも力比べしたいんならいつだって付き合うぜ。ただし、その時はあくまで付き合うだけ、本気 でなんか向き合わねぇ。修行がどれだけ進んでいるかを確認するために俺たちはいつでも手を貸すし、普段から『修行』を怠らなければいいだけの話だ。な、剣 心」

「で、 ござる。弥彦はあまりに拙者や左之助の腕を見るあまりに強いと錯覚していたか、どうにか自分でも乗り越えられると錯覚していたのが、薫殿にとっては一番許 せなかった部分でござろう。拙者は飛天御剣流を伝授するつもりもない。活心流で強くなる、それを強く念じればそれで済むことでござる」

 左之助はいくらか柔らかい口調を使ったが、剣心は相変わらず厳しい口調で弥彦に言う。弥彦は涙をぬぐいながら、ふらふらとだがその足は薫の部屋の方に向いていた。


「…師範代、少しいいか?」

「…駄目よ、そんなに簡単に活心流を修行しようとしても、しばらくは私はあなたに何も教える気も、相手をする気もないわ」

 弥彦は自分がどれだけ惨めな思いをしたかわかっていたつもりだったが、薫の怒りはまだまだ弥彦自身が驕っていると言っていると言うように断言しているようだった。

「…竹 刀でも、木刀でも、獲物はなんだっていい、けど今のあなたに足りないものがあれば、活心流に向き合う覚悟。しばらく獲物を持たずに自分がどうしたいか考え るもよし、獲物で何かをするでもよし。…剣心は難しいと思うけど、左之助ぐらいならば相手になってくれるんじゃないかしら、それでも何日後になるかはわか らないけど」

 弥彦 は完全に薫の逆鱗に触れたと確信せざるを得なかった。それどころか突き放されるようなことまで薫はしていた、それを確信する結果になった。障子を開けるこ とも、開けてもらうこともかなわず、弥彦は薫の部屋から追い払われる。再び道場に戻ったとき、剣心の姿は無く左之助が道場の真ん中で胡坐をかいて座ってい た。作法などは気にしない、と普段から言っているかのようだったが今日に限っては上座に向かって座り、瞑想をしているようだった。

「…嬢ちゃんは相当怒ってるんだな。…剣心も一緒だぜ。少し色々を甘く見すぎたな」

 左之助は目も開けなければ弥彦の方に向きもしないで、そうつぶやいた。

 弥彦はそんな左之助を自分からよけていくと、自分の部屋の方に歩いていく。

「…ちょっとやりすぎだったんじゃねぇのか、剣心」

 片目を開けて、道場の外に出る扉の後ろに隠れていた剣心に左之助が言う。だが剣心は何も言わないでその場に座り込むと、月を見ながらポツリ剣心はつぶやく。

「・・・荒療治、弥彦にはそうでもしないと、私の飛天御剣流ばかりを追いかけてしまう。…私は何も門下生探しをしているわけではないし、飛天御剣流を継承させるつもりもないからね」


 次の 日から、弥彦は自分で色々な稽古の方法を考えながら自分だけで稽古を始める。初めは素振りからだったが、その素振りも簡単に薫に止められてしまわないよう に、確実に腕の力を増すようにきっちりと型にはめてやっていた。ほかにも一日でできることは次々とこなしていった。

 そんなことを弥彦は数ヶ月、続けることになった。

「…自業自得か。剣心はともかく、薫にまで言われたんじゃ、よほど甘ちゃんだったんだな、俺は」

 いつしかそんなことを胸に秘め、神谷活心流門下生としての自分であるための稽古を続けた。