三つ目の不思議


晴天。だけど美玖にはやることが無い。


無職無貯金病気持ち。見事な三段活用?


東京から実家に引っ越し、今は知らない町で暮らす。


そこに一台、年季の入った車が止まる。


美玖は道を訊ねられるが、生憎翠紅はこの街のことがよくわからない。


すると、その車の主は、


じゃああなたの好きな好きな風景の場所を教えてくれるかな、


と代わりの訊ね方をされる。


助手席に乗せられて、美玖の一番好きな、小高い丘に案内する。


貴方の名前、訊いてもいいかな?


車の主が言う。


小白美玖。


それが自分の名だと言うと、車の主はきょとんとした顔でこちらを見る。


そして、その顔が驚きに変わって、車の主が言う。


自分も琥珀翠紅と言う、


と名乗る。


なるほど驚くわけだ。文字は違えど響きは一緒。


良い風景をありがとう。


翠紅は特別に作ったのであろう、名刺を渡した。


琥珀翠紅、ご丁寧に自分のホームページであろうURLとメールアドレスがある。


暇だったら見てみて、メールは随時受付中。


そう、笑いながら車の主の方のもう一人の こはくみく は居ずことなく去っていく。


後日、ホームページをのぞいたところ、名前を少し変えた私と彼女の出会いが詩になっていた。


知らない町でも少し、自分の居場所を見つけられた、美玖はそんな気がした。