一つ目の不思議


 みんな楽しそうだね、うん。


 翠紅の世界はなくなるよ、きっともうすぐ。


 誰も振り返らないうちに姿を消すんだ。


 楽しさは永遠。淋しさは一刻(とき)


 だからみんなは、悲しんでいる人には気付かないんだ。


 だけど…悲しみを共有してくれる人は居ない。鬱人には鬱人しか逢わないのかな?


 淋しさの中を一人彷徨う。


 自我も、自分の周辺世界も、なくなればいいんだ。


 それも叶わず翠紅は一人、彷徨い歩く。